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第219話 火季休暇
この世界にも四季がある。
この世界の四季は風、火、土、氷で表される。
風の季節は春
火の季節は夏
土の季節は秋
氷の季節は冬
季節感は俺の世界と差程大差はない。
ただ切り替わりが極端という点を置いては。
この世界の一年は12カ月で、3ヶ月置きに季節が変わる。
俺の世界みたいに緩やかに移り変わる訳ではなく、スイッチを切り換えたみたいに突然切り替わる。
それも月が変わった瞬間。
風の季節と土の季節は良いとして、問題は火の季節と氷の季節だ。
火の季節と氷の季節は、数分前まで良い陽気だったのが、月を跨いだ瞬間茹だるような暑さになったり、凍てつくような寒さに変わる。
火の季節は俺の世界でいう真夏日。
つまり、ついさっきまで20℃くらいだった気温が、月を跨いだ瞬間30℃以上に上がる。
氷の季節も同じで、20℃くらいだった気温が一気に1℃くらいまで下がる。
緩やかにかわるならまだしも、突然のこの気温差に俺はついていけなかった。
エクレール学院には火季休暇というものが存在する。
俺の世界でいう夏休みだ。
エクレール学院の火季休暇は火の季節丸々休みとなる。
俺とシャロウネは火季休暇を使い、グロウ邸に帰ってきていた。
「ディー、大丈夫ですか?」
シャロウネが心配そうに覗き込んでくる。
「ディラント様、冷たい飲み物です」
アランがそう言って、冷たい飲み物を出してくれた。
ラジールは俺を冷やす為のタオルや水を取りに行っていた。
この世界は当然ながら空調設備がない。
氷季(ひょうき)は暖炉があるからまだ良いものの、火季(かき)は温度を下げる方法が日陰を作ったり、風通しを良くしたりと原始的な方法となる。
湿気がないから日陰に居ればまだマシではあるものの、暑いことに変わりはない。
この急激な暑さと馬車での長旅の疲れで、俺は完全にダウンしていた。
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