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第221話 ∥

(リオネスside) 僕が来ることはディラントも知っている筈だ。 ディラントは律儀だ。 そんなディラントの出迎えがないのが不思議だった。 僕の問いにグロウ伯爵とシャロウネ嬢が顔を見合せた。 その反応に僕たちも顔を見合せた。 「…ディラントは地下ですわ」 シャロウネ嬢がそう言って困ったように笑う。 「地下?地下とはどういう事なんだ?」 地下とは貯蔵庫など他にも色々あるが、基本は人が居座るような場所じゃない。 「…ディラントは暑さに弱いのです」 シャロウネ嬢がため息をつきながら呆れたように言う。 僕の頭にはハテナマークが浮かんだ。 「…暑さに弱い?それはどういう事だ?」 「シャロウネ、殿下を地下に案内して差し上げなさい」 僕が首を傾げていると、グロウ伯爵がそう言う。 「…そうですわね、そちらの方が早いですわね」 そう言うと、シャロウネ嬢は『ディーのところにご案内します』と言って手で方向を差し伸べた。 シャロウネ嬢の案内で地下に続く階段を下りる。 「こんなところにディラントが居るのか?」 ロンドが半信半疑みたいで、ボソッと呟く。 しばらく下りると、狭い廊下が続く。 地下なだけあって、火季でも空気がひんやりしている。 「シャロウネ嬢、どこまで行くんだ?」 前を歩くシャロウネ嬢に聞いてみる。 「もう少しですわ」 そう言ってシャロウネ嬢はニッコリと笑った。 「ところで、ディラントはなぜ地下に?」 素朴な疑問。 誰でも抱く疑問だろう。 その証拠に、その質問をした瞬間ロンドとオルトの意識もこっちを向いた。 「…ディーが暑さに弱いと、さっき言いましたよね?」 そう言うシャロウネ嬢に僕は頷く。 「ディーは幼少の頃から暑さに弱く、火季になる度に涼を求めて地下の貯蔵庫に入り浸るようになり、見かねたお父様が貯蔵庫を改装してディーの部屋を作ってしまったのですわ」 『それがここです』と、地下には到底似合わない装飾の施された扉の前に案内された。

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