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第224話 ∥

俺が火季が苦手と知ったリオネスが、何故か落ち込んでるように見えた。 「殿下は今回はどうして此方に?」 リオネスからの手紙ではグロウ邸にお邪魔するという内容で、目的は書かれていなかった。 俺がそう聞くと、リオネスの瞳が揺れた。 リオネスが何か言い淀む。 その様子に、俺は首を傾げた。 しばらくすると、痺れを切らしたロンドが小さくリオネスを肘で小突く。 王子に対してそんな事をしていいのかと思ったけど、リオネスは気にしてないみたいだった。 「……実は、今日はディラントに用があって……」 リオネスが話し始めた時、外から微かに足音が聞こえてきた。 「すいません、ちょっと待ってください」 王族の言葉を遮るのは不敬にあたる。 でもこのまま話を聞くことは出来ないと思った。 アランに視線を向けると、アランも気付いていたみたいで、俺が頼む前に扉を開けに向かった。 アランが扉を開けた瞬間、足音の主が部屋に勢いよく飛び込んできた。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ (リオネスside) グロウ邸を訪ねた目的を話そうとすると、ディラントに止められた。 その後ディラントがアランに目配せをする。 それに気付いたアランが部屋の扉を開けた。 僕はどうしたんだと見ていると、アランが扉を開けた途端なにかが部屋に飛び込んできた。 白い大きなかたまり。 一瞬それが何か分からなかった。 「殿下、下がって!」 ぼんやりとしていると、オルトに体を引かれた。 急かさずオルトが前に出て剣に手を掛ける。 僕の前にはロンドが僕を庇うように立った。 僕は二人の隙間から様子を伺った。 見ると扉付近に白い毛並みの赤い瞳をした大型の獣がこちらを威嚇していた。 「オルト、剣から手を離してください」 オルトと獣が睨み合っていると、そう声がしてディラントがオルトと獣の間に立った。 「この子は何もしません。剣を納めてください」 そう言ってディラントが獣を庇うように手を広げた。

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