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第227話 避暑地
リオネスが帰った後、俺たちは避暑地の話を伯爵様にした。
伯爵様は快く快諾してくれた。
俺たちが王族専用の避暑地に行くのは来月。
火の2の月、俺の世界で言う8月だ。
この世界で最も暑くなる月でもある。
避暑地は北にあるため、かなり涼しいらしい。
この季節に避暑地に行けるのは俺としては有りがたいけど、その分移動距離が長くて、目的地に着くまで10日掛かるらしい。
王族であるリオネスが行くため、王宮から護衛騎士が同行する。
他にも各家からメイドや従者が同行するため、かなりの大人数での移動になる。
俺が馬車が苦手ということはリオネスたちには伝えてあるけど、何か対策しないと同行者全員に迷惑を掛けることになる。
俺は侍医と相談することにした。
「酔い自体は薬草などで押さえる事は出来ますが、移動の疲れなどはこまめに休暇を取っていただくか、何か気を紛らわすくらいしか……」
侍医からはそんな答えが返ってきた。
「……ですよね」
分かってた。
馬車酔いは何とかなっても、疲れまではどうしようもない。
そう思って、俺はため息をついた。
結局、何の対策も出来ずに出発当日を迎えた。
馬車酔いは薬草を飲んだから大丈夫だと思う。
疲れた時は素直に言うしかないかな。
「ディー、王宮に着く前に話しておかなければならない事があります」
集合場所となっている王宮に向かう馬車の中でシャロウネがそう言う。
そのただならぬ雰囲気に、俺は思わず背筋を伸ばした。
「ディーは馬車が苦手です」
そう言われて、俺は頷く。
「今回はグロウ家だけではなく、王家やオルゼーク家、ハーク家の騎士や従者も同行します」
俺はまた頷く。
「良いですか!」
そう言ってシャロウネがビシッと俺を指指す。
俺は思わず体が跳ねた。
「3つ、私と約束していただきます。1つ、気分が悪くなったらすぐに報告すること!2つ、少しでも疲れたら必ず言うこと!3つ、一人で行動しないこと!宜しいですか、この3つは絶対に守っていただきます」
この3つの約束に心当たりのある俺は、了承するしかなかった。
「この事は殿下たちとも共有しておきます」
これは、旅行中はおとなしくしてた方がいいな。
「とはいえ、ディーにとっては初めての旅行なのですから、楽しむ事も忘れてはいけませんわ」
そう言ってシャロウネがパチンとウィンクをして笑う。
「そうですね、無理せず楽しみます」
そう言って、俺も笑い返した。
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