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第235話 ∥

オルトと他愛ない話をしながら森を歩く。 最初は普通の内容だったのが、最終的に訓練の話になった。 「ディラントはなぜ混合魔法を使うようになったんだ?」 オルトがふと聞いてくる。 「俺はもともと魔力が弱くて、何とか使い物にならないかと考えた結果ですね」 「ディラントはそんなに魔力が弱いのか?」 オルトがそう言って首を傾げる。 確か設定では、オルトは魔力が多かった気がする。 ていうか、攻略対象全員の能力値が一般より遥かに高い。 「普通に単体だとこれくらいなんですよ」 そう言って俺は指先に火魔法で炎を灯した。 最初はライターくらいの炎しか出せなかったけど、今はバーナーくらいの出力が出せるようになった。 でもそれだけで、攻撃魔法は使えない。 「でもこれに風魔法を加えると…」 俺は指先に灯した炎に風魔法を加えた。 そうすると、バーナーくらいだった炎が風の力で大きく膨れ上がった。 それを見たオルトが驚いた表情を見せる。 「すごいな、風魔法を加えるだけでそんなに違うのか」 「これでも、他の人には全く敵わないですけど……」 そう言う自分の言葉に苦笑が漏れた。 「いや、それを思い付くだけでもすごいと思うぞ」 そう言ってオルトはニカッと笑った。 この世界の人たちは誰でも魔法が当たり前のように使える。 そのせいか、工夫というものをあまりしない。 しないというよりは、その概念がないんだろう。 魔力が多ければ強い魔法が使えるし、少なければ弱い魔法しか使えない。 どうすれば弱い魔法でも使い物になるかなんて考えもしないんだろう。 そういう俺も、向こうの世界の記憶があるから複合魔法を思い付いただけで、その記憶がなければ思い付きもしなかっただろう。 そう思った瞬間、ぞっとした。 向こうの世界の記憶がなければなんて……そんな事を考えるなんて。 こっちの世界に俺自身、馴染んでいるのは分かっていた。 でも向こうの世界での事、友華の事を忘れた事なんて無かった。 それでも前より向こうでの事を思い出す機会が少なくなってるような気がした。 俺は、その内向こうの世界の事や友華の事を忘れてしまうんじゃないかと怖くなった。 「ディラント!」 そんな事を考えていると、突然オルトに呼ばれた。 その声にハッとして見ると、何か白いものがこっちに向かって飛んできていて、俺はそれを咄嗟に体を捻って避けた。 白い何かはなんとか回避出来たものの、それを避けて後ろに足をついた瞬間、下に落ちる感覚がした。 気付いた時にはもう遅くて、目の前には崖が広がっていた。

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