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第4章 The・桃色地獄!?
第4章 The・桃色地獄!?
かくして咲良さんの指揮のもとに、一大プロジェクトが進行中なのでありました。その内容たるや〝ガチムチ系の男を料理する〟なのだから、チャレンジ精神が旺盛だとしてもものには限度があるわけで……。
ともあれ毛布が台所の床に敷かれた。その上に仰向けに寝かされた俺の姿を俯瞰すれば、さしずめ〝解剖台にくくりつけられた大型犬の図〟。
それに依然として後ろ手に縛られっぱなしなので、手首に過負荷がかかる。野球部伝統の千本ノックでしごかれるほうが、手足の自由が利くという点でマシかも。神さま、これも愛の試練なのですか……?
しつこいようだけれど、俺は一八五センチ×七十八キロという堂々たる体格の持ち主だ。
姉ちゃんの本棚からこっそり拝借して読みふけったBLコミックスの例に当てはめれば、ビジュアル的に咲良さんが受で俺が攻という図式が成り立ってしかるべしだ。
なのに現実は残酷だ。
いつの日か咲良さんをこの腕に抱いてキスの雨を降らせながらワイシャツのボタンを外してみたい、と想像の翼を広げてきた俺が、あろうことか胸をはだけられて股間はむき出しという状態にあるのですよ。
おまけに靴下はしっかり履いているわ、ネクタイも締めたままとくれば、街中でコートをぱかっと開いて局部を開陳におよぶ露出狂顔負けのハレンチな姿だ。
かてて加えてスラックスおよびボクサーブリーフは半端にずり下ろされたっきりで、みっともなさもここに極まれり、だ。
腰から下をくの字に折って股間を隠そうにも、咲良さんが大の字に割り広げられた足の間に胡坐 をかいてしまったために、それさえ思うに任せない。
ところで当の咲良さんは、といえば……。
ボウル片手に刷毛でもって、俺の、ち、乳首に! チョコレートソースを塗りたくっている最中です。
鼻歌交じりに、それはそれは楽しそうに。右の頬にえくぼを刻みながら、ぺたぺたと刷毛を動かす御姿は、お砂遊びに興じる幼稚園児のように無心であらせられまする。
チョコソースを乳暈に塗り広げつつも、円環からはみ出すことがないように刷毛を小刻みにすべらせる手つきは、今度は熟練の職人のそれ。
それにしても、くすぐったいよぉ……!
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