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第37話
これぞ、まさしく身から出た錆だ。
ラズベリーガナッシュを作っている最中にスナップを利かせて泡だて器をふるい、こんなぐあいにチョコソースとブランデーを混ぜ合わせると仕上がりがよりクリーミィになると、したり顔で手本を示してみせたのが裏目に出た。
咲良さんは、いわば先生と生徒ごっこで学んだことをおさらいするような指づかいで生クリームをホイップする。肉の環のあわいをくじられると、寒気に似たものが背筋を這いのぼる。
俺は歯を食いしばった。でないと、よがり声が迸ってしまいそうだ。そういえば咲良さんは不屈の闘士で、言 を左右にする取引先にお百度を踏むこともいとわない人だっけ。
粘り強く交渉を進めるなかで培ったノウハウの応用編、とばかりに件 の突起に集中攻撃を仕かけてこられると、敗色濃厚だ。
おちんぽさんの先っちょが異常に熱くなって、後から後からスケベな汁がにじむ。水飴のように、もったりした流れは幹をつたい落ち、そこに溶け残るチョコをまだらに蕩かしていく。
「くぅ、うううううう……!」
「あえぎ声を出し惜しみする上の口とはあべこべに、下の口は饒舌 だな。気持ちいい、気持ちいいと、おれの指をがっついている」
「俺みたいにムサいのが『あんあん』言ってもキモいだけですよ……っていうか、精神的にオーバーフローもいいとこです。マントル層に達するくらい深い穴を掘って隠れたい気分です……ぅ、ああっ!」
……これでもか、これでもかと例のぽっちをすりたててくるあたり、やっぱりイケズだ。
「恥ずかしがることはない、好きな子を啼かせるのがセックスの醍醐味じゃないか」
好きな子、好きな子、好きな子……名にしおう堅物だってイチコロ間違いなしの殺し文句が、耳の奥でエンドレスで再生される。しかもフルオーケストラの伴奏つきで。
ふにゃあと目尻が下がれば入口の開閉ぐあいも俄然、なめらかになるみたいで、薬指! も仲間に加わった。
「早瀬がエロい表情 を見せてくれればくれるほど狩猟本能をかき立てられ、ここが……」
「……ぅ、ん、うう……っ!」
ぬぐぐ、と三本まとめて指が根元まで埋め込まれた瞬間、いななくようにムスコがいちだんと反り返った。
持ちこたえたのは奇蹟だ。俺の躰がブレーカーなら、快感という雷が落ちたような今の一撃で、マジにトドメを刺されてもおかしくなかった。
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