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第38話

「もう少しやわらぎしだい美肉(うまじし)にありつける、と思えば期待がいやがうえにも高まる」  語尾にかぶせて舌なめずりをされると、塩、胡椒をされて銀器に盛りつけられた俺の図、というイメージが鮮明に浮かんで足を閉じてしまう。  すると指を動かしにくいと、たしなめるふうに内壁を十文字に引っかかれた。貴公子然とした咲良さんが天下御免のむっつりスケベだったとは、お釈迦さまでもご存じあるまい──なのだ。  毛布を皺くちゃにしながらのたくると、かえって指をぱくつくことになる。問題の種子を爪弾かれながら、果肉を裏ごしする要領でカリをしこしこされると、甘だるいものが下腹部に満ち満ちてくる。  うう、射精()したい。恥も外聞もかなぐり捨てて、射精したい。ザーなメンが鈴口めざして怒濤の勢いで押し寄せてくれば、ねだりがましげに腰を振りたててしまうのも、むべなるかなだったりして。  でも心ならずも〝受〟デビューを果たしたとはいえ、咲良さんが見ているわけで粗相するのは男のプライドが許さない面があるのも事実で……。  ぐちゃぐちゃと指が出入りすれば、頭の中もぐちゃぐちゃだ。 「入口がふっくらと盛り上がって、いい按配にこなれてきた。これならイケるだろう」  指が抜き取られた。前戯の段階で果てる、などという醜態をさらさずにすんで助かったあ……。  ところが胸を撫で下ろしたのもつかの間、でんぐり返しの逆バージョンという形に腰を抱え込まれた。俺は顔面蒼白になって、かぶりを振りまくった。 「こ、心の準備がまだできていません」 「新米の営業マンも経験を積むうちに駆け引きが上手くなる。あれと同じだ。習うより慣れろの精神でいくのが上達への第一歩だ」  そこで嫣然(えんぜん)と微笑むのは反則です。その威力たるやメガトン級で、咲良さんが足の間に腰を割り込ませてくれば、進んで足をくの字に立てて、「どうぞ、ご笑味くださいませ」的なポーズをとっちゃうのだ。  時を同じくして猛りを後ろにあてがわれた。うがつ角度に微調整がほどこされると、はたと我に返った。痛くありませんように、と十字を切りたくなった。

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