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第10話

 目覚めた時はタクのアパートの部屋だった。  夢見たのか、そう思ったら、オメガが隣りで寝ていて。  悲鳴をあげたのだった。  どうやって帰ったのだかわからない。  死体はどうした。  血まみれの身体をどう綺麗にした。  車はどうした。  謎は色々ある。  タクの免許か何かでタクの住所は知ったのだとしても。  でも、意識のないタクをタクのバイクを使ってタクの部屋まで運んだのは間違いない。  見かけ以上の腕力とか、身体能力をこのオメガが持っていることはもうわかってる。  あのアルファにセックスとはいえ応えなければならないのだ。  そのために、オメガの身体能力は高く作られているのかもしれない。  柔軟さも、体力も底なしなのだ。  オメガは。      その貪欲さも。  アルファとオメガのセックスは、ベータには殺し合いにしか見えない。   実際、アルファとしてもベータは死ぬし、オメガに本気出されてもベータは死ぬ。    とにかく。  あのアルファの死体や自動車をどうしたのかわからないが、そのまま、タクの家にオメガは住みついてしまったのだ。  出ていかない。  警察も呼べない。  アルファ殺しを見過ごしてしまったのだ。  犯人のオメガとセックスまでしてしまった。  ベータがオメガとすることは許されてないのに。  オメガはアルファのものなのだ。  つまり、もう、死刑確定なのだ。  警察に行けるわけがない。  そして、泣いてお願いしても、オメガは出て行ってくれないのだ。  タクに食事を作らせ、身の回りの世話をさせ、居座っている。  それだけでは足りず、アルファ殺しを手伝わせるようになった。  もちろん、断っている。  断っているんだ。  だけど、今日のように電話で呼ばれる。  どこそこにトラックがある。  そこの荷台の天井をあけて、ホテルの裏の路上の窓の下にいろ、と命令だけがくる。  そして。  「俺が殺されてもいいの?・・・タク」  そう言われる。  最初からお前が殺さなければ、殺されることもないんじゃないか、とかの反論は受け付けられることなく、電話は切れる。  そして、タクはいわれた場所に行ってしまう。  そして、手伝ってしまう。  オメガがアルファを殺して逃げるのを。  少年が捕まり、殺されるのは嫌だからだ。    少年が言った。   自分は捕まれば、大勢のアルファに犯され殺されるんだと。  オメガの処刑はそんなもんだと。  それは。  それは。  タクは嫌だった。  アルファが殺される、その意味がわからないのもある。  ベータを殺しても仕方ないアルファ、神であるアルファ、何故それがオメガにみすみす殺されるのかもわからない。    アルファを殺すオメガ、その意味はもっと良くわからなくて。  でも。  拙いことはわかってて。  でも。  でも。  でも!!  オメガはタクの家に住みついてしまったのだ。  そして、出て行かない。  出て行ってくれない。  偉そうに威張って。  そして、少年に望まれたならタクはセックスを拒めないのだ。  ヘタレだ。  ヘタレ過ぎる。  自分でも思う。  タクは正直。  もうどうすればいのかわからないまま、少年のパンツから何から洗濯し、(血で汚れた衣服はアパートの庭にある焼却炉で焼く)飯を食わせ、威張られていた。    

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