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第15話

 「一人一人殺すなんざ、まどろっこしい」  少年は愚痴る。  打たれた注射の後を痛そうに擦っている  「そう言うな、今はまだこれが確実な殺し方なんだ。て言うか、まだ唯一の。だが、考えていないわけじゃない。お前のおかげでわかってきたことは沢山あるし、オレたちにはお前だけじゃなく、【博士】もいる。お前が殺したアルファがいなくなったことによって、奴らの中の力の均衡も崩れてきてる。ただ殺すだけじゃない、奴らから権力をもぎ取ることもオレたちの目的だ」  少年の肩を抱きながら「医者」は言った。  本当の医者ではない。  だが、【博士】からの指示で注射や薬剤を扱うため、そうよばれている。  組織では本名と過去については語られない。  馴れ馴れしく肩をだかれ、なんなら首筋に唇までつけられた。  少年は冷たく突き飛ばす。  「お前とはもうしない」    言い切った。    前はよくしてた。  ベータにしては悪くなかったから。   この身体は毎日しないとダメなのだ。   ベータ一人では物足りないから、医者や技師や運転手、(もちろん呼び名)複数でしていた。  抑制剤だけでは足りないのだ。    だけど、泣くタクの顔を見ながらすることにくらべたら、嫌がっても最後は溺れるタクとすることに比べたら、今は面白くもなんともない。  「ええ・・・」  心の底から医者はがっかりしたようだ。  それはそうだ。   オメガとしたのだ。  忘れられない快楽だ。  タク位だ。  嫌がって泣くのは。  だが無理強いされることもない。  組織で、前に少年に無理強いしたヤツをヤり殺したからだ。  もう射精したくない、止めたい、許して下さい。  そう泣き叫んでいた。  ソイツは泣きながら血を吐き、それでも射精しながら死んだ。    オメガをなんだと思っているのか。  あのアルファの相手をするためにつくられた。  だから、身体能力もベータよりはるかに高く、知能も高い。  アルファの番なのだ。  アルファは仲間などいない。  アルファはアルファ一人きりなのだ。  アルファ同士で争いあっている。  協力したのは、この世界の支配と、オメガの管理のみ。  オメガと、オメガが生んだベータの子供だけがアルファの身内になる。  自分の子供であるアルファでさえ、アルファには敵対する者なのだ。  オメガをアルファは自分のために設計した。  優秀でないはずがないのだ。  ベータではオメガをとうにか出来るものではないのだ。    「そんなに一緒に住んでるガキがいいの?」  医者に聞かれて素直に少年は頷く。  「嫌がって泣いてるのを、いいって叫ぶまでにするのがたまらない」  そこは正直に言う。  オメガはアルファの要求に応える教育を受けてるのて、性的なタブーがないため、欲望に対してはオープンに発言する。  「舐めろって言ったらいくらでも舐めるし、許してっていいながら、泣きながら腰を振ってる。可愛い。可愛くて仕方ない。アイツ俺の足の指だって舐めるぞ」  そう嬉しくなって言ったら、医者が何故か気の毒そうな顔をした。    「ああ・・・そう、かわいがってあげてるのね」  何故か医者はため息をつく。  少年は納得がいかない。  俺が可愛いがつてやってるんだから、タクは幸せなはすなのに、なんだ、その顔は。  「とにかくアルファ達のパワーバランスの均衡は崩れてきてる。そして、ヤツらは増えない。オレたちが殺せば殺す分だけ減っていく。最終的にはヤツらアルファを根絶やしにするが、今は一人一人殺していこう。均衡が崩れて、ヤツらがアルファ同士で殺しあってくれるためにもね」  医者は言った。  アルファはアルファであることこそが弱点なのだ。  アルファはただ一人の生き物だから。  人類、ベータのようにこそこそと画策したり他人と組んでみたり、裏切ったりもしない。  どこまでも誇り高く、一人ある者なのだ。    「ベータはベータらしく、画策して、裏切りまくって、戦うしかないよね」  医者は笑う。  そう。  そこ以外にアルファに付け入る方法はないのだ。  そして、アルファはオメガに対してのみは無防備になってしまう性質も利用する。  「俺はアルファを殺せたら何でもいいよ」  少年はどうでもよさそうに言った。  本音だろう。  この少年には、アルファから世界を取り戻す、その組織の理念などどうでもいいのだ。  「もちろん君があってこそ、の計画さ」   医者は少年が抱けないことを残念におもいながら、今回の計画について説明し始めた。    

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