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第16話

 がさがさ    がさがさ  歩く時に音が響いてしまうのは仕方ない。  このアルファには脚が30本ある。  上半身こそ逞しい男性のそれだが、下半身は虫、ムカデのそれに似ている。  ただ、ムカデの脚ではなく、人間の男の脚がついている。  顔はクモをおもわす。  顔にいくつもあるは複眼が、何かを見逃すことはない。  切り裂いたような口調から、赤い舌がのぞく。  人類の要素が少ないアルファだった。  もちろんアルファは自身の姿を誇る。  だが、人類の姿に慣れたこのアルファのオメガは初めての時は、アルファを見ただけで気絶したものだった。  自分のオメガを得た時のことを思い出す。  普通はセンターで引き合わせ、オメガが複数のアルファの中から一人をえらぶ。  だが、このアルファはオメガというものは人類に近いアルファを選ぶものであることを知っていたので、事前に競争相手のアルファを一人殺しておいた。  他のアルファはそのオメガからは手をひいた。  そこまでしてこの一人のオメガに執着する必要もないからだ。  そのオメガはオメガにしては平凡で。  アルファが好む激しさも、無理やりでも従えたくなる誇り高さもなく、ただ、オメガの身体を持ってるだけの少年にしか見えなかったからだ。  競争なく、オメガを手に入れることができた。  オメガの選択肢など、何人かいるなら誰かを選ぶくらいしかない。  複数いないなら決定だ。  だが、アルファはセンターでそのオメガを見た時から決めていた。  このオメガだと。  何よりちかづくことがなくても、その匂いでわかった。  自分のだと。  事前に直接姿を見せることなく、アルファはオメガをてにいれた。  花嫁としてアルファの屋敷につれて来られ、巨大な寝台にペールだけまとって寝かされ、抑制剤を抜かれた発情した身体を疼かせながらアルファを待つオメガの姿は、今思い出しても股間が疼く。  初めての発情期、顔にも、身体にも、そばかすが浮かんだ白い身体を震わせて、痩せた身体は骨が浮き出ていて、アルファによっては「みすぼらしい」と言ったかもしれない。  だが、このアルファにはそのゴージャスとはほど遠い、哀れささえ、そそらせるものだった。  育っても、花のように咲き誇ることはないだろう。  だが、この手の中で壊してしまいたくなるような、守りたくなるような、これは他のオメガにはない。  そこが気に入ったのだ。  発情に意識を朦朧とさせ、必勝で指を穴に挿れ、自慰をしていた。  匂いを全身から発しながら、  匂い。  この匂い。だ。  オレのオメガだ。  アルファはわらった。  4本ある腕で抱き上げた時、オメガはやっとアルファを見た。  エメラルドグリーンの光沢のある肌は蛇のようだった。  8つの複眼のある、クモのような顔。  切り口のような口からは蛇のような舌が覗いていた。  4つの腕。  ムカデのような脚が沢山ある下半身、そして、その下半身には自分を貫くための巨大な性器がそびえ立っていた。  オメガは恐怖に叫んだ。  アルファが人間の姿ではないことは知っていた。   センターにアルファがオメガを見にくることも、ある程度大きくなれば、引き合わせられることもあった。   翼。  獣の脚。  犬に似た顔。  沢山の目。  アルファの異形には慣れていたつもりだった。  だけど。  だけど、これは。  これは!!!  あまりの恐ろしさにオメガは気をうしなった。    それはアルファには丁度良かった。  説得や言い聞かせる手間が省ける。  まずは身体から支配するのだ。  それでも、塗れた穴を舐めてやった。   2つに割れた蛇のような舌で。  中を味わった。  自分だけの。  自分だけの。  オメガを。  味も中の様子も全てが好ましかった。  ほかのオメガは知らない。    このアルファも、オメガを手に入れるのに時間がかかったから。  でも、発情期の度に使ってきた、ベータの女達とも、男達とも違った。  これは。    抱いても死なないで側にいる。    それも嬉しかった。    中は熱くて甘かった。  気を失っているくせに、感じて身体を震わせるのが良かった。    そばかすのある胸を舐め、乳首もちゃんと愛してやった。  オメガよりは、ベータの少年に近い身体だった。    オメガは、少年のようにみえて、違う。  乳首ももっとも発達していて、いやらしい。  でも、吸って噛んだなら、ちゃんと尖ったし、細い喉から喘ぎ声は出た。  ちゃんと勃起したままの性器から、そこから出る白蜜も味わってやった。  痙攣しながら出すのが可愛かった。  本ばかり読んでる、隠れたがるオメガ。  アルファから隠れるこのオメガを、オメガ達が知らない隠し部屋からアルファは見ていて、ずっと欲しかったのだ。  4つの腕で痩せた小さな身体を持ち上げ、そしてゆっくり貫いていった。  小さな穴なのに。  自分を受け入れていく。  薄い腹が膨らみ、自分の性器がどこにあるのかがわかった。  でも、死なない。   受け入れてくれてる。  アルファは歓喜した。  この世界に自分を受け入れられる存在があることに。  貫かれ、オメガは意識を取り戻し、叫び、また意識を失い、また取り戻すことをくりかえした。  揺さぶった。  ベータの時はせめて腹を突き破らないうに気をつけねばならなかった。  だけど、今は遠慮がなかった。    そこがわかった。    子供を産むための場所。  子宮口。  そこを先を出し入れして味わった。  可哀想にオメガは吐いたし、失禁したが、それさえ愛しかった。  「可愛がってやる。オレの子を産め、オレの側にいろ!!」  そう叫んだ。  オメガは泣いて叫ぶだけだった。  でも、感じていることは十分わかった。    性器を締め付け蠢く穴から。  オメガには選択肢などない。  アルファの側にいるしかない。  ならば。  自分を愛するべきなのだ。  優しくしてやる。  大事にしてやる。  抱くときは優しくするのは無理だか。  オメガにだけ耐えられる欲望を思い切り、その身体にぶつけた。  「許して・・・ゆるしてぇ・・・」  オメガは泣いて許しを願ったが、許されるはずがなかった。  アルファは生まれて初めて、自分の欲望を思うがまま叩き込んだ。  そうやって。  アルファは、大事なオメガをてにいれたのだった。  そこから毎日抱いて、抱くとき以外は優しくしたら、今ではオメガはアルファをおそれるどころか、喜んで、自分から虫のような下半身にある巨大なアルファの性器を舐めにくるし、小さな口で先だけを懸命に咥えもする。  読んだ本の話をしたり、今ではいつかうまれる子供について話をしたりもする。  そう。  オメガは孕む、もう少し身体が大人になれば。  孕ますために犯しているのだから当然だ。  アルファが生まれることを世界の存続のために望むべきなのだろうが、ベータが産まれるといい。  我が子でもアルファはアルファ。  敵になる。  だからベータがいい。  この屋敷で自分の子供をオメガが育てるのを見たい。  オメガが育てるアルファの子であるベータは、特権階級となる。  アルファのための世界を維持してくれるだろう。  でもそれよりも。  オメガが自分の子供を抱く姿が見たかった。  もしも、オメガが生まれたら?  それは考えないことにした。    今日は新しい領地の見回りだった。  死んだアルファの領地を奪い合い、手に入れた。  またひとつ、ゲームに勝った。  アルファにとって、この世界は自分達の権力ゲームの盤にすぎない。    アルファはご機嫌だった。   明日は領地に帰り、可愛いオメガを抱くとしよう。  抱かれることに慣れて、今ではとても可愛くなった。  慣れないころは頃でかわいかったが。  今日は。  仕方ない。   どこかでベータでも見繕わせるか。     発情期ではないが、我慢出来る気分ではない。  そう思った。     

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