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第19話
ガサガサ
ガサガサ
沢山の脚で寝室まで這っていく。
その動きは滑らかだし、速い。
当然だ。
アルファは完璧なのだから。
寝室の扉は自動で開く。
この屋敷は、首都に来た時のための屋敷で、特殊な身体のこのアルファのためにあつらえてある。
巨大な寝台の上にオメガがいた。
服を脱いで。
自分のオメガよりは数才上だろう。
美しい。
美しいオメガだった。
オメガとして、完璧な身体。
男とも女とも違う、その身体。
男性に似ていてもオメガは違うのだ。
その胸は撫でさすられるためのものだった。
僅かな膨らみ。
そして、尖り発達した乳首は吸われ、噛まれて、舐められるためのものだった。
男性器に似たそこは生殖能力はない。
そこはアルファが味わい、楽しむためにある。
もう、勃起し、滴らせていた。
無意識にふたつに割れた舌をアルファは唇からのぞかせる。
味わいたかった。
脚を広げて見せつけてくるそこは、縦割れ膨らみ、女性器のようでもあり、襞と芽がないけれど、甘く濡れてシロップを塗ったように光っていた。
甘いだろう。
舐めなければ。
匂いが満ちている。
オメガの匂いだ。
喰うべきものの匂いだ。
そして、挑戦的な目が。
美しい弧を持つ大きな瞳が射抜くようにアルファを見つめていた。
それが、アルファが持つ、どうしようもない征服心を煽りたてた。
迷いなどない。
オメガを喰らって何が悪い。
止める他のアルファがいないなら、このオメガも自分のモノだ。
番のオメガを愛していた。
もちろん。
あの痩せた可哀想な、それでいて、嗜虐心を煽るオメガは他にはいない。
責めめ抜いた後に、優しくして甘やかしてしまいたくなるオメガは他にはいない。
他では代えなどない。
だが。
それはこのオメガを抱かないことを止める理由にはならない。
ああ、こんなところにオメガが現れるのは危険だ。
おかしい。
これは、危険なオメガだ。
そんなことはわかっている。
だが、殺すなり、尋問するなりするのは。
犯した後でいい。
それはオメガからも見てとれた。
オメガもアルファを欲しがっている。
アルファ無しでオメガがそう長くいれるはずがない。
アルファとオメガは互い無しではいられない。
そう、作られているから。
その後に何があったとしても。
オメガが楽しみ終わるまでは。
アルファが欲望を吐き出すまでは。
何もない。
セックスすることしか、互いにはなかった。
寝台のその小さな身体にむかってアルファは襲いかかった。
オメガは腕を広げて、それをうけいれた。
二匹の欲望に満ちた獣がそこにいた。
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