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第24話
少年はゆうゆうと汚れたからだにシャツだけを羽織った。
そして、少し惜しそうに孔から肉が溶けて骨だけになった陰茎を引き抜く。
抜く際に甘く感じて、吐息を漏らす。
てもその辺に投げ捨てた。
もういらないからだ。
鼻歌を歌いながら屋敷から出る。
屋敷内はカメラもない。
アルファこそが、アルファ自身こそが、セキュリティであるからだ。
アルファは本来、銃を持ったベータ達が押しかけてきてもものともしない。
生身で、だ。
本物の。
本物の化け物なのだ。
人類を征服した。
でも、オメガは別だ。
アルファはオメガへの欲望を我慢することが出来ないから。
そう。
少年もやってみるまでわからなかったが、オメガだけが。
オメガこそが。
アルファを殺せるのだ。
血と精液だらけの身体にシャツだけをまとい、大きな屋敷の庭の端を目指す。
屋敷の中も庭にもカメラはない。
だが、屋敷の外にはカメラがある。
外は監視の対象だ。
だが。
壁のここ。
この外だけはカメラの死角だ。
組織が調べたから間違いない。
門の開閉はアルファの許可がいる。
アルファがベータを連れて来させるための門を開けるための番号はもう使えない。
そのベータを生きて出すつもりはなかったからだ。
だからこの壁から外に出るしかない。
少年はドキドキする。
ちゃんとタクが俺のメールの通りにしてくれていたら。
指定の場所から指定のものを持ち出し、指定の行き方でここにたどり着き、指定の方法で、指定の時間にセットしてくれていたら。
少年は逃げられる。
タク。
タク。
少年はドキドキする。
お前は今日も俺のいうことを聞いてくれるのか?
タクにこれをさせる必要などどこにもない。
組織の他のメンバーにさせるのが正しい。
確実にやり遂げるだろうから。
でも、少年はタクを巻き込みたかった。
タクにしてもらいたかった。
ドキドキしながら、胸のポケットからスイッチを取り出し押した。
すうん
低い音だった。
でも、壁は崩れて穴が開いた。
少年が一人通れるくらいの。
少年は歓喜する。
タク。
タク。
俺のためにしてくれた。
今日も!!!
少年は顔をクシャクシャにして笑い、穴をぬけていく。
そして、その向こうに、指定された場所で半泣きで立っているタクに抱きついた。
「可愛いなぁ、タク。お前は本当に可愛い・・・後で可愛がってやるからな」
そう囁いて耳を噛んだら、タクは困ったようにまた泣き出した。
「もうやだ・・・」
勃起しながら泣くのが可愛い。
さっさと諦めて、素直に俺を愛せばいいものを。
少年は傲慢に思った。
少年はタクを放すつもりは一切ない。
「逃げるぞ」
少年はタクが持ってきたつなぎを着ると、タクに用意させたナンバーのないバイクにまたがる。
後ろに乗るしかないタクは、泣きながら乗る。
「泣くな。後でゆっくり可愛がってやるからさ・・・」
少年は上機嫌に言って、バイクを発進させた。
アルファとセックスして殺して。
そして、今日もタクは俺を迎えに来た。
楽しくて仕方なかった。
少年には良い夜だった。
この後タクとするセックスも含めて。
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