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第27話

 「殺し合いをさせればいい」  新しい作戦を少年は考えていた。  どこかの街のどこかの部屋。  影のようにこっそり集まって。  「どうやって?」  【医師】、【技師】、【兵士】、【運転手】。  コードネームで呼び合う。  他にも沢山いる。  組織のメンバー半分はいる。  これは珍しい。      出来るだけ少ない人数で集まるのが基本だからだ。     見つかっても全滅は避けられる。    【博士】だけは別。  博士たけは。  絶対に出てこない。  リーダーでありながら、全てを把握し、でもほとんどのメンバーが博士に会ったことはない。  少年でさえ。  「結婚式がある。オメガをアルファがセンターから迎える日だ。そのオメガをかっさらう」  少年は簡単に言った。  「はぁ?そんなことをしたら・・・」   呆れたように医師が言う。  「そう、絶対に追いかけてくるな、アルファが。待ちに待った自分のオメガだ」  少年は楽しそうだ。  「そこにほかのアルファを2匹くらい鉢合わせさせるんだよ。発情した番のないオメガ。番を持っていても手を出さないアルファはいないだろ、当然、取り合いになる。殺し合うのはあいつらの本能だ」  生き残るのは一匹だろう。  「1人でも生き残ったソイツを殺せぱさっさと三匹殺せる」  少年は楽しそうだった。  「アルファは殺し合うぞ。オメガを二人同時に抱くなんて、アルファでもそうそうしたことないだろうからな。そうなったなら・・・俺が残ったアルファを殺す」  一人でも多くさっさとアルファを殺したかった。  殺して殺して。   消し去るんだ。  アルファを!!    本当は幼いアルファを育てるセンターを襲いたいのだ。  さすがに、幼児や赤ん坊のアルファはベータでも殺せる。    だが、それはアルファでもセンターの場所はトップクラスのアルファしか知らない。  彼らも自分がどこで育っていたのか、その記憶は消されてセンターから出されるのだ。  アルファを殺す方法は本当に限られていて、少年が身体を張って殺しているのだが、  これでは。  時間がかかりすぎる。    少年は我慢できなくなっていた、    確かに、アルファはアルファで殺し合うから数は増えない。  それをさらに殺しているのだから、間違いなく、アルファを減らしているのは間違いないのだが・・・これではいつまでたっても終わらない。  組織も色々考えているが、まだ確実な方法がみつからない。    で、そんな中、少年は一度に3人のアルファを殺すことを考えついたのだ。    殺し合わせる。    これは。    うまくいけば。  効率的だった。  アルファはオメガに関することでは、おかしくなる。  本来しない判断もする。    「可能だよ」  世界でも唯一のアルファハンターが、このメンバーの誰よりもアルファを良く知る少年が言った。  「オメガにおかしくなるのはアルファだけじゃねーしな」  少年は笑った。  部屋のほとんどの連中が顔を赤らめた。    少年に喰われたものがほとんどだからだ。  少年は、女性さえ喰っていた。     ほぼ全員。    少年のフェロモンに狂ったのだから。    オメガの護衛は少年に勝てるわけがないだろう。  耐性のあるものを護衛にしていたとしても。  少年のフェロモン量は体質を変えてあるから、通常量ではないのだ。  「俺がオメガを攫って、アルファを殺す。なんなら花嫁の処女を俺がいただいてもいいな」  少年は楽しそうだった。  「今回は君の可愛いペットを巻き込むのをやめるんだな」  医師がため息をつきながら言った。  少年が初めてムっとした顔をした。  少年が飼ってるペットに夢中なのはみんな知っていた。  おかげで喰われることがなくなったことにホっとしていた。    残念でもあるが、あんな、あんな、自分の意志を無視された、ただ貪られるようなセックス。  自尊心を破壊されるのだ。    快楽に溺れてしまうだけに。  あれは。  地獄のような天国だった。  ベータには、人間には過ぎるのだ。  快楽以上の恐ろしさがあった。  「今回の作戦は今までとは違う新しい方法だ。彼には危険すぎる。今までだって素人の彼にさせるべきではなかったんだ。まあ、確かに、良くやってくれたし、助かったがね」  医師はそこは認めた。    素人だけに余計に目につかなかった。  「彼ら」が探しているのは訓練を受けたテロリストと、殺戮マシーンのオメガだからだ。  普通の、フリーターの青年は彼らの予想の範囲外だ。  組織を追っているのはベータの警察組織の中にある特別部署だ。   アルファはオメガに殺されたアルファなどには興味がない。  アルファが殺されたことは秘匿するだろうが。  だがそれ以外はどうでもいい。  殺された奴が悪いのだ。   その辺はアルファは徹底してる。  彼らは高貴なのだ、それゆえに。  だが、ベータの上層部は別だ。  奴らはご主人様のために差し出せるものが欲しいのだ。  そのためならなんでもする。  忠実な猟犬なのだ。  忠実な犬であることを証明し、ご主人様に誉めていただくことを生きがいにしているのだ。  だから、組織を必死で追っている。  「可愛いなら、今回は巻き込むな」  医師は言った。  今回の作戦はタイミングも状況も読めない。  ここに素人は巻き込めない。  失敗がゆるされない。  少年は膨れたが納得した。  「・・・・・・仕方ねーな。まあ、タクには別のことで、俺を好きだと証明させよう」    ブツブツ言っていた。    部屋の全員がまだ直接会って話たこともないタクに(データや映像や写真や監視の対象としては知っている。少年がタクの安全のために、監視をつけさせているから)同情していた。  この少年に執着される。  それはあまりにも気の毒すぎた。  少年は深く歪んでいて、狂っていて、恐ろしいものだから。     ある意味アルファより。    どれほど美しく、魅力的でも。    「まあ、とにかく。作戦を説明するぜ」  少年は考えた作戦を説明しはじめた。                 

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