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第32話

 そのオメガは少年よりは少女のようだった。  もちろん、オメガはオメガだ。  最初から、男でも女でもない。    微かな胸の隆起、発達した女性のような乳首。  男性のものに似た、擬似性器。  そして、後孔は性器であることが見て取れる外形だ。  縦割れ、女性の陰核や襞こそないが、そこは挿入するための孔だとわかり、いやらしい。    オメガはその身体をみれは、男でもなく、女でもないオメガだとわかるのだ。  だが少年のように少年らしく見えるオメガもいれば、この花嫁のように少女のように見えるオメガもいる。  花嫁は真っ白なドレスを着ていた。  ウェディングドレスだ。  顔が紅潮しているのはもうすぐ薬が切れるからだろう。  これは丁度いい。  少年はそう思った。  手足はしばってある。  息が荒い。  肩で息をしている。  発情し始めている。     慣れてないから狂うだろう。  もうすぐだ。  ここはトラック荷台だ。  トラックのコンテナの中だ。  今回は運転は【運転手】がしている。  大規模な作戦なのだ。  まあ、アルファ殺しはどれも大規模な事件なのだが。  少年を手に入れるまで、組織はアルファ撲滅をうたいながらも、1人も殺せなかったのだ。  今回はサポートだけではなく、少年の指揮の元、組織も作戦を遂行する。  少年はいつの間にか、それだけの地位を組織で得ていた。    オメガの匂いがコンテナの中に満ちていく。  少年からではない。  まだ少年のフェロモンは解放されてない。  この少女のような花嫁のオメガからだ。  オメガはオメガの影響を受けないが・・・。  良い匂いだとは思った。  だが。  少年は、自分以外のオメガの匂いが嫌いだった。  「花嫁さんか」  笑った。    綺麗にラッピングされて、アルファに届けられる、アルファ専用のオナホ。  それがオメガの花嫁。  少年は匂いだけでなく、自分以外のオメガも大嫌いだった。    オメガの顔が紅潮して、喘ぎ始める。  発情期は初めてそうなった頃が一番つらい  わからないからだ。  身体が何を欲しがっているのかも、  どうすればいいのかわからなくて、擬似性器で自慰をするしかない。    確かにそこで、射精をして、いつもより強烈に感じてるのにいくら出しても収まらない。  少し知識のあるオメガなら、後ろの孔を弄りだす。  マセたオメガなら、もうそこで感じることも知ってるかもしれない。    おかしくなるまでかき混ぜて、叫んでイクだろう。  でも、収まらないのだ。  泣く。    泣き叫ぶ。  まあ、抑制剤を打ったなら、かなり落ち着くが、それでも。  それだけでは無理だ。  ディルドでもつかって奥までちゃんと満足させるか、ベータでもいいから使うか。  一番いいのは。    アルファのデカいので貫かれ、奥で放たれることだ。  抑制剤がなかったら、それしか考えられなくなる。  でも、初めの頃は。  それすら知らないから、おさまらないそれに怯えるし、アルファがいても、アルファに犯されることに怯える。  まさか。  あんな凶器に貫かれたいなんて、自分が思っているとは誰も思えないからだ。  大概。  オメガの初夜は地獄絵図だ。    幼いオメガは泣き叫んでこわがり、それを猛り狂ったアルファが犯すのだ。  アルファだけは、思い出してニタニタ笑うかもしれないが、オメガは初夜を思い出したくないだろう。  抑えつけられ、無理やり犯される。  どんなに泣き叫んでも許されない。  少年は、思い出したくないことを思い出して唇を噛んだ。  思い出すな。  今は。  いつか泣き叫ばせてやる日まで。  頭を振ってその思い出を追い出した。  オメガが喘ぎだす。  そして、身悶える。    自慰がしたいのだ。  でも縛られていて、何もできない。  柔らかな薄い布を何枚も重ねた、それでも身体のラインを露わにするドレスの股間が盛り上がっている。  花嫁はもう。  欲情している。  花婿はいないのに。  「触ってぇ・・・お願い・・・触って・・・」   花嫁はすすり泣き始めた。  縛られ自由が利かないから、花嫁はコンテナの床にガチガチになった擬似性器をこすりつけ始めた。  「気持ち・・・いい・・・いい、ああっ・・」  声を上げ始める。  「口も塞いどくんだったな。ヤだな、発情したオメガって。冷静に見たらキモイよな、 ・・・おおっ、すぐに出るな。早過ぎるだろ、コイツ、キモ!!」  少年は嫌悪を隠さない。    オメガのドレスに染みができたからだ。  イってるのだ。     床をつかってオナニーしながら。  だが、少年以外なら、甘く泣きながら身悶え感じるこの花嫁のいやらしさに夢中になってしまっただろう。  女性でも、だ。  この生き物を、喘がせたい。  鳴かせたい。  犯したい。  そう思わせてしまうのが。  オメガなのだ。  「まだ、時間もあるし、な」  少年はそれでもオメガに近づいた。  少年以外の組織の人間がこの花嫁に近づいたなら、犯してしまっただろう。  匂いも。  その熱っぽい求める目も。    欲しがる唇も。  熱い肌も。  求める舌も。    欲望を掻き立てるものでしかなかった。  少年は冷静に花嫁をおさえつけ、ドレスをめくりあげた。    やはり、ドレスの下は何も着てなかった。   使われるための道具として嫁ぐのだから。  擬似性器は勃起したまま、ダラダラ精液をこぼしていたし、孔は充血し、液をしたたらせ、欲しがっていた。    乳首も尖って、苛められるのを待っていた。  まだ。  12かそれくらいの身体なのに、  有り得ないほど、欲望をかき立てられる身体。    オメガだった。  どうしようもなく。  「さわってぇ・・・」  自分から腰をつきだして、花嫁が泣いた。  ベールだけは清らかにそんな身体を包んでいた。  「・・・・・・はっ」  少年は唇を歪めて笑った。  オメガは。  やはり、嫌いだった。                

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