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第41話

 「翼もない、腕も二本しかない、ましてや一人でしかない【千里眼】お前が」   「我々相手にどう戦う?」  「愚か」  「愚か」  アルファ殺しというゲームでは実績のある【双頭】のアルファは笑った。  アルファがこの世界でしていることは支配ゲームだ。   ベータの上位層も程度の低い似たようなことをしているが、ベータというものは卑怯という本質で出来上がっているのて、アルファ程真剣ではない。 アルファは正々堂々と権力を競うゲームをしていて、真剣なあまり、本当のゲームにしてしまった。 この勝ち負けと、肉体の勝負で権力の奪い合いをしているのだ。 純粋に頭脳とその力で争っている。 だからこそ、アルファ。 ベータのような汚らしい権力争いはアルファには意味がないのだ。  だからベータは支配されるべきモノ達なのだとアルファ達は考えている。  アルファと1対1で対決することも出来ないのだし。  暴力で決める支配ゲームも、アルファは好んだ。  アルファ同士、どちらが強いか競いあう殺し合いを。  それはアルファの本能でもあった。  双頭は攻撃態勢に入づた。  他のアルファに比べたなら、双頭の双子は細身には見える。 だが、その腕力はアルファの肉体ですら引きちぎる。  アルファには銃を手にした人間など脅威ではない。  アルファを殺すには的確に数少ない急所を狙うしかない。  首などの血管を的確に切り裂くしかない。  その頭蓋骨は銃弾さえ弾くし、   その肉のほとんどは銃弾を柔らかく受け入れ衝撃を殺し、そして跳ね返すのだ。  アルファとは本物の化け物なのだ。    「お前は【私の】【オメガ】を【攫い】【犯した】!!万死に値する!!」  千里眼の30ある目の全てが光る。  千里眼はその角として多眼以外は人間に近い。  今のように怒りに燃えていない時は肌の色も薄いオレンジ色だ。  人の形が少なければ少ないほど、先祖の化け物にちかく、強い、とアルファはされている。  それからすれば、千里眼は強いとは言えない。  だが、千里眼は自分に自信があった。  千里眼は自分の目に自信があったのだ。    私には全てが見える。  千里眼はそれがどれほどのモノであるのかを知っていた。  目こそが大切。     目さえあればいいのだ。  それをわからぬ双頭を心の底から嘲笑う。   双頭は翼に蛇の身体、2つの上半身。  人間の形が少ないアルファだ。  だが、それはどれほどの意味もないことを教えてやる。  千里眼はそう決めた。  双頭は滑るように襲いかかってきた。  双頭の身体のほとんどが蛇なのだ。  蛇の反応速度は弾丸のように早い。   そして、弾丸はアルファには効かないが、アルファはアルファの肉体を捻り千切ることや、噛み千切ることができるのだ。  しかも双頭のアルファの2つに別れた上半身は、動きながら伸びた。  ゴムのように伸び、しなり軌道を変えていく。  それは2つの身体が違う方向から、攻撃を仕掛けることを可能にした。  前から千里眼に襲いかかる双頭と、背後にまわり千里眼に襲いかかる双頭だ。  4つ腕、そして2つの牙をもつ口。    それが千里眼にむかって襲いかかってきたのだ。  腕で身体を引き裂き、牙で食い千切るつもりだ。  双頭の双方向からの攻撃を避けれるアルファはいなかった。  双頭は勝利を確信した。  自分達は千里眼より速く、千里眼より攻撃力があり、二人がかりで攻撃できるのだから。  双頭は2つの頭で笑った。      勝利は確定だった。

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