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第43話

 千里眼は双頭の喉を喰い破った。  熱い血の味を楽しんだ。  オメガを犯すことと同じ位、アルファはアルファを殺すのが大好きだ。     自分も殺される可能性があるから、気軽にはしないが、こうやって味わえる時、感じる高揚はオメガを得る時と同じくらい素晴らしい。  肉を喰らった。    味わい飲み込む。  双頭は僅かに腕を動かしたがすぐに事切れた。  片方を殺した時に、もう片方の死はもう確定していた。  目を潰した双頭の半身から殺した。   見えなくなった半身は狙いやすく、まずはそちらから殺した。  動かなくなった半身を抱えた双頭は、重りを背負ったのと同じで、むしろ、一人のアルファよりも不利になった。  一人で二人。二人で一人の利点など、もうなかった。    だからそこから先は簡単で。  双頭を千里眼は嬲り殺した。  手足をちぎり、背中の羽根をもいだ。  そして、さっさと死んだもう片方の分も残酷に教えこんだ。  「【私の】【オメガに】【手を出した】な、お前達は!!!」  千里眼は何度となくそう叫び、その肉を引きちぎり、喰らった。  丁寧に、残酷に、殺した。  だが。  双頭もアルファらしく、謝罪することもなく、赦しも乞わなかった。  そんなことをするのはベータだけだ。  ベータ共には誇りなどない。  そして、千里眼は千切れた肉片になった双頭を見て満足した。  2つの頭を海に向かって交互に蹴った。  双頭の頭は2つとも、港の汚い海の底へと沈んでいった。  これでいい。  これで。  コケにされたことはこれでおわった。  後は。  後はだ。  千里眼の紫に輝く30ある瞳が、一気に陰った。  明るいオレンジに輝く肌が、薄い色に戻った。  千里眼は見えるから、物陰に向かう。    そこで、少年のようなオメガが、千里眼のオメガを抱いて隠れている。  千里眼のオメガ。   可愛いオメガ。  花嫁。  これにも始末をつけなければならなかった。    

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