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第44話
少年のようなオメガは美しかったが、千里眼は興味がなかった。
誰かの番のオメガなのだろう、少年の首には印があったから余計に。
誘うフェロモンでも出されていたなら、犯したかもしれないが、番のいるオメガなので、フェロモンは出ていない。
人の番を狙うので有名な双頭に攫われてきたのだろう。
人のもので有るオメガには興味がなかった。
少年のようなオメガに命じた。
アルファらしく。
「その子を渡せ」
少年は大人しく抱きかかえていたオメガを差し出した。
それでいい。
オメガはアルファに従えばいいのだ。
汚された自分のオメガを抱き上げた。
少年がいることなど気にしなかった。
オメガは双頭によって汚されていた。
まだ二人のうち一人にだけだっただろう。
もう片方は少年のようなオメガの方で楽しんでいただろうから
酷く嬲り殺した側が、このオメガを犯した側だったならいいと強く願った。
ならば、復讐は果たした。
まあ、あの二人は二人で一人なので、どちら側なのかは関係ないとも言えるが。
オメガは震えていた。
あんなに舐めて楽しんだ身体だったのに、流石に舐める気はしなかった。
この身体は汚された。
だが。
その中に押し入る必要はあった。
舐めて可愛がり、愛おしく思っていた身体が、汚され、他のアルファの精液でよごれているのを見るだけて、怒りが欲望を呼び覚ましたから。
だか、目の色は光らなかったし、怒りに肌の色が変わることもなかった。
「ああ、お前のせいじゃない」
怯えた目を向けてくる、花嫁になるはずだったオメガに向かって千里眼は言った。
「お前のせいなんかじゃない」
乱された黒色長い髪を撫でた。
哀れさはあった。
愛しさもあった。
「・・・・・・お前のせいなどではない」
優しい声だった。
仕方がないといったような。
優しく細く、華奢で幼いその身体を撫でた。
オメガがピクリと身体を動かしたのは、恐怖感だけじゃないともうわかっていた。
自分じゃないアルファによって、この身体は開かれたのだ。
教え込んだ以上の快楽に乱れたのだ。
千里眼の、30ある瞳から涙が流れていた。
確かめるように撫でながら。
番にされ、中に何度も放たれたおかげか、オメガはもう落ち着きつつあった。
だが、感じやすい身体は、ゆっくり撫でていたら、もう火がつき始めている。
だが、これは。
オメガが本当にアルファを求めるモノではない。
それはもう失われてしまった。
本当に飢えたようにアルファを求めるそれは、このオメガにはない。
このオメガは双頭のためのオメガになってしまっていたから。
でも、撫でずにはいられなかった。
はあっ
んっ
オメガは恐怖を感じながら、それでも喘ぎはじめた。
ベータ相手でも、感じやすいオメガはこうなる。
それだけ。
それだけ。
涙が、沢山ある瞳から流れ落ちる。
後頭部にまである美しい紫の瞳から。
アルファは一人きりだ。
双頭のように二人で一人ならともかく、アルファはオメガを得なければこの世界に一人きりだ。
オメガが、オメガだけが。
アルファに「家族」を与えてくれ、この世界に自分が一人きりではないことを教えてくれる。
なのに。
なのに。
失った。
失ってしまった。
「お前を愛したかった」
アルファは言った。
それは心からの言葉だった。
また違うオメガを見つけたとしても、こんなにも待ちわびたり、苦しんだりすることはないだろう。
だから、これから殺すのも、愛しすぎるからだ。
誰かに抱かれ、汚された身体を食らうのも。
愛しすぎるからだ。
シャツは戦いでもう千切れていた。
ズボンを下ろし、巨大な性器で、千里眼は愛しいオメガを引き裂いた。
愛しいもう自分のものではないオメガの中は。
それでも。
とても甘かった。
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