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第51話
震える指のせいで、アパートのドアがなかなか開けられなかった。
怖くて泣きながら開けた。
少年と花が、殺されている映像か浮かんで離れなかった。
少年が殺してきたアルファみたいに、血まみれになって少年は死んでるんじゃないか。
その考えが離れない。
やったことはやり返される。
少年が犯し殺したように、少年は犯し殺されているのかもしれない。
泣きながら部屋に飛び込む。
「タク?・・・遅かったな。腹減った」
少年がゲームをしながら顔もこちらに向けずに言った。
花と格闘ゲームで対戦中だった。
「おかえりなさーい」
花もそう言うけれど、テレビから目を離さない。
二人は真剣だった。
オメガ達はタクの家でゲームをすることにハマり、今ではタクよりも上手い。
オメガは本当に、学習能力が高い。
少年にも花にも、もうタクは勝てない。
なにか信じられないような技をつないでくる。
大会とかに出たらいいんじゃないかと真剣に思うほとだ。
二人は子供らしく、ゲームには夢中になった。
タクに怒られなければずっとしている。
タクも、子供らしい少年達の姿は安心出来るので、相当なことがない限りは好きなだけゲームをさせているのだが。
今は。
犯され死んでる二人を想像していたから。
タクは泣きながら二人を抱きしめた。
背中から、ゲームしているのを気にせずに。
「良かった・・・良かったぁ・・・」
タクはわんわん子供のように泣き叫んだ。
安心したのだ。
指先まで冷えるような恐怖からの安心に、タクの心は振り回されすぎて、感情の制御ができなくなっていた。
「タク・・・?」
「タクさん?」
少年と花は戸惑った。
だか、少年はすぐに気づく。
「タク・・・お前、誰にあった」
二人を抱きしめ、泣きじゃくるタクに問い詰める。
だけと、タクは泣いて泣いて。
少年と花を離そうとはしなかった。
「良かったぁ・・・」
タクは震えて泣きながら、そう叫びつづけた。
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