51 / 174

第51話

 震える指のせいで、アパートのドアがなかなか開けられなかった。  怖くて泣きながら開けた。  少年と花が、殺されている映像か浮かんで離れなかった。  少年が殺してきたアルファみたいに、血まみれになって少年は死んでるんじゃないか。  その考えが離れない。  やったことはやり返される。  少年が犯し殺したように、少年は犯し殺されているのかもしれない。  泣きながら部屋に飛び込む。    「タク?・・・遅かったな。腹減った」  少年がゲームをしながら顔もこちらに向けずに言った。  花と格闘ゲームで対戦中だった。  「おかえりなさーい」  花もそう言うけれど、テレビから目を離さない。  二人は真剣だった。     オメガ達はタクの家でゲームをすることにハマり、今ではタクよりも上手い。  オメガは本当に、学習能力が高い。   少年にも花にも、もうタクは勝てない。  なにか信じられないような技をつないでくる。    大会とかに出たらいいんじゃないかと真剣に思うほとだ。  二人は子供らしく、ゲームには夢中になった。  タクに怒られなければずっとしている。    タクも、子供らしい少年達の姿は安心出来るので、相当なことがない限りは好きなだけゲームをさせているのだが。  今は。  犯され死んでる二人を想像していたから。  タクは泣きながら二人を抱きしめた。  背中から、ゲームしているのを気にせずに。  「良かった・・・良かったぁ・・・」  タクはわんわん子供のように泣き叫んだ。  安心したのだ。   指先まで冷えるような恐怖からの安心に、タクの心は振り回されすぎて、感情の制御ができなくなっていた。  「タク・・・?」  「タクさん?」  少年と花は戸惑った。  だか、少年はすぐに気づく。    「タク・・・お前、誰にあった」  二人を抱きしめ、泣きじゃくるタクに問い詰める。  だけと、タクは泣いて泣いて。  少年と花を離そうとはしなかった。  「良かったぁ・・・」  タクは震えて泣きながら、そう叫びつづけた。  

ともだちにシェアしよう!