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第62話
花は可愛いワンピースを着てご機嫌にその屋敷に近づく。
花は腰までの長い髪を揺らして歩く。
花はこの髪に執着はないのだけれど、長い髪は首のアルファの跡を隠すのは都合がいい。
ただでさえ、人目を引く花の容姿に首の跡ではすぐオメガだとバレてしまう。
一般人がオメガを見ることなど、アルファ以上にないとしても。
それに長い髪は花に似合った。
タクのアパートで少年とタクと3人で暮らしていた時は、花はハーフパンツにTシャツに、引っ詰めた髪で、そのだらしなさを本人も気に入っていたが、花は元々、綺麗な可愛い服が嫌いではない。
タクの部屋ではダラダラゲーム三昧で、行儀悪く床に転がっていたが、実は花は行儀作法はしっかり仕込まれている。
真っ白なワンピースに白い麦わら帽子。
花は見たこともないくらい可愛い美少女にしかみえなかった。
誰もが目をやるような。
花はその屋敷の門の前に立つだけで良かった。
屋敷に放たれた犬が門まで来て吠えることもわかっていた。
花は泣いてへたり込むだけで良かった。
かわいくしくしく泣く。
誰もが慰めてあげたくなる14才位の少女。
だけど、それは予想外だった。
「大丈夫?、こら!!止めろ!!」
犬に命令したのは。
門の中から花を心配そうに見るのは。
花より2つ3つ年上の少年だった。
これは。
想定外だったが・・・。
花は続けることにした。
「足が痛いの」
おどろいて足を捻ったふりをした。
華奢なサンダルを履く、小さな足首と細い足首をみせつける。
少年が目を見開いた。
予想外だが、いける。
そう花は判断をした。
「歩けない・・・」
花は綺麗な目から涙を流してみせた。
少年は花から目を離せない。
少年が手にした携帯で、何かを言った。
門が開いた。
花は俯く。
笑ってしまわないように。
侵入成功だ。
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