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第71話

 「あんたはワンパターンなんだよ、下手くそが」  裸で、股まで濡らしているくせに、その少年のようなオメガはアルファを嘲笑った。  「後ろからガンガン突き上げるだけ。ないな。ないな、これじゃあつまんねぇ・・・そら、このオメガの頭もおかしくなる」  そのオメガはよりにもよって、突かれ貫かれ、目をむきながらよがっている自分の番の頬を撫でた。  番は喜んだ。  触れられることが好きだから。  少年の手に自分の頬をこすりつける。  白面は怒った。  激しく突き上げる。  ひぎぃ   ひぎぃ  番は鳴いてすぐにそんな手のことは忘れた。    ただの甘い肉になる。  愛しい愛しい、蠢き締め付けてくる肉塊に。  「俺ならもっと気持ちよくしてやるのに。オメガを抱くのも悪くないしな」  少年はまたオメガに触れようとする。  白面は怒った。  オメガと性交しているのを邪魔されるなど有り得なかった。    いや、他のアルファに奪われる可能性はいつも考えていた。  だからこの籠をつくって閉じ込めたのだ。  このオメガはここから出ていけない。  本人はもう出て行く意志などとっくにないが、万が一連れ出された時のことも考えてある。  この離れから外に出たならば、粉々に爆発して吹き飛ぶようにさえなっている。     吹き飛ぶのはオメガの肉体だ。  もちろん。  白面から離れる時はこのオメガが死ぬ時で、誰にも渡すつもりはなかった。  「身体に爆弾までし込んで。子供を産ませても抱かせもせずに閉じ込めて」  少年の声は静かで、だから余計にとても怒っているのたとわかった。  いいっ  気持ちいいっ  好きぃ  オメガが身体をくねらせ欲しがる。   それを少年が哀れみの目で見ているのを白面は許せなかった。  喜んでいる。     こんなにも喜んでいる。    欲しがって、満たされて、愛されて。  私のオメガは幸せなのだ。  そう、した。    「外はどんななの?私、センターから外に出たことがなかったの」  まだ幼い少女のようだった頃のオメガが言う。  勝ち得たオメガだった。  一目見た時から愛していた。  他の候補のアルファを屠って手に入れた。  オメガは人間の要素が強いアルファの方を好むと聞いていた。  4つの脚を持ち、四足歩行をし、目や鼻や耳のない自分を怖がるのではないかと、生まれてはじめて心配した。  むしろ、人間から離れた姿を誇りに思ってきたのに、この小さなオメガにだけは怖がられたくなかった。  だから。  ギリギリまで姿を見せなかった。  この離れ、まだ、当時は人を入れることを許していたこのオメガの為だけに建てた離れの寝室に、初夜に入った時の恐怖をまだ覚えている。  小さな、素肌にベールだけをまとったオメガは、アルファの姿に目を丸くはしたが、その腕を広げてねだった。    「助けて」    と。   初めての発情期に苦しんでいたから。  その目に恐怖はなくて。  欲望と哀願だけがあったから。  アルファは安堵した。  腕の中に小さな身体を抱きしめた。  これは抱き殺してきたベータ達とはちがった。  奴らは泣いて怖がり、許して欲しいと懇願した。    抱いて欲しいと強請り、自分を怖がらない。  唯一の。     唯一の。  自分をもとめる。  唯一の。  唯一の。  その日からこの身体だけを愛してきた。  その夜から、ずっと抱き続けている。  オメガは愛されることになれ、すぐに白面を慕うようになる。  白面はこよなくオメガを愛したからだ。  「外はどんななの?」  でも、そう聞かれるようになった。  オメガの病だ。  よくあるらしい。  外に焦がれる。  外に出てどうする。  オメガは、アルファのためにいるのに。  他のアルファに出会いたいのか?  嫉妬した。  オメガはアルファのためにいる。   だから。  自分じゃなくてもいいのかもしれない。  アルファなら。  誰でもいいのかもしれない。  その考えは白面を苦しめた。  「オ前ハ何処ニモ行カセナイ」  オメガに白面は言った。  もっと滑らかに話すアルファがいいのか?  人間のような美しい顔をしたアルファがいいのか?  獣のような4足ではないアルファがいいのか?  ああ、どこぞにいたな、ベータの間でも人気のある【天使】と呼ばれるアルファが。  あんなアルファがいいのか?  「違う・・・違う・・・ただ知りたかっただけ」  そう泣くオメガを責めぬいた。  あの頃のまだ幼いオメガは、まだここまで淫らになりきれてなく、一週間責め続けたなら、もう二度と外へ行きたいとは言わなくなった。  そこから、子供を産ませて幸せだった。  子供はベータで、だから屋敷で育てられた。    タキと名付けて可愛がった。  白面はタキを愛した。  自分の子供だ。    何よりも可愛い。  オメガも、タキを愛した。  まだオメガ自身が幼いのに、全霊で愛した。  本当に愛した。  だから。  許せなかった。  タキの世話のために、アルファをおざなりにした。  アルファに抱かれるのを少し待って欲しいなどと言った。  許せなかった。  責めぬいた。   執拗に抱き続けた。  それからは、もう、そんなことは言わなくなった。  そんな風にして。  そんな風にして。  オメガは自分だけでいいことを教え込んで。  完全に自分だけで幸せなオメガにしたのに。  「哀れなオメガ。壊れるしかなかったんだな」  少年の声は静かで。  だからこそ腹が立った。  こんなオメガなんかに、なんで好きに言わせないといけない。  この愛を。  この愛を。  これは愛なのだ。  うがぁあぁ  うぎぉぉぉ    オメガが悦んでいた。  獣のように叫びながら。    腹を突き破るほどに突き上げた。  ・・・実際オメガではなくベータなら腸を外へぶちまけていただろう、    そして、オメガの中に注ぎ込んだ。  今日は子供を産ませるためにしているから。    子供はオメガには抱かせない。  オメガが抱くのは自分だけでいい。  「あの子を抱かせて?どうしてるの?」  二人目のトキを産ませた後は、時々正気にかえってオメガはそう言った。  抱かせなかった。  オメガが愛するのは自分だけでいい。  オメガと自分の子供は自分がちゃんと愛している。  だから、オメガは自分だけを愛せばいい。  そして、オメガが自分以外を忘れるまで、抱き続けた。  今では、もう、子供達の名前すら覚えていないだろう。  「イグぅ・・・イグぅっ・・・気持ぢいい」  オメガは口をだらんと開けた、だらしない顔で言った。  正直に。  オメガはもう幸せなのに。  なのに。  「哀れなもんだ・・・こんな下手くそなセックスがセックスだと思いこまされて、閉じ込められて」  わざとらしいため息さえつかれた。      そのオメガは文字通り丸腰どころか、服さえ着てないくせに、素手で人間を千切り、銃なども効かないアルファを前にして、アルファを軽蔑さえしてみせたのだ。  ため息ついて、首まで振って。   アルファの苛立ちは頂点に達した。               

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