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第76話

 タクにはもう何もわからない。  いや、わかってたことが一度でもあっただろうか?  この少年が現れてから。  「今日からここが俺とお前の寝室だ」   そう言われた。  少年に巨大な寝台に、  アルファのための寝台の上に押し倒され、いつものようにタクは泣くことになる。  「アルファになりすますって・・・権力ゲームって何だよ!!」  タクは聞くが、あっと言う間に裸に剥かれ、股間を咥えられていた。      「ああっ・・・止め・・・ああっ」  タクは泣く。         でも、結局いつものように喘ぎ始める。  少年の舌や唇の気持ちよさに、逆らえない。  腰まで揺らしてしまう。        咥えたままこちらを見上げてくる捕食者のような目に怯えて、でも、もうそれにさえ感じてしまう自に絶望する。  少年は見せつけるように、その真っ赤で綺麗な舌でタクの裏筋を舐めていく。  金色の目がタクを刺す。  欲しがられていた。  欲しい。  欲しい。  凄まじい餓え。  それは魂さえ差し出せと迫る悪魔のよう。  美しい目。  強い目。  こんなにも求められるのは、アルファがオメガを求めるかのようで。  それはとても怖い。  「嫌だぁ」  タクは泣く。  そんな風に欲しがられるのは怖い。  「・・・心配すんな。俺はアルファにも負けねぇ」  少年は見当違いのことを言い始める。  そんなことは心配してない。    アルファを殺してるのを何度も見てる。  白面の死体を片付けたのもタクだ。  庭に埋めた。  相当深く掘らなければならなかった。  アルファはでかいから。  誰もそんな汚れ仕事はしてくれない。  するのはタグだ。  「お前がもう俺のことを心配しなくてもいいようにする。この世界からアルファを消しでやる」  少年の言うことは、いつだってタクには信じ難いことで。    大体、支配者達がしている支配ゲームなんて、ベータは知らない。  ベータには関係ないことで。  「気持ち良くなってろ・・・なぁ?泣くなよ・・・」  ささやかれ、先の穴を舌で責められた。  背中を反らして耐えるタクを、少年は食い入るように見つめてくる。  なんでそんなに欲しがる。  なんでオレなんだ。  なんでオレ・・・。  タクは怖い。  怖い。    強く吸われて射精した。  身体を震わせ、感じ続ける間も舐められ、快感で焼かれる。  でもその瞳がそれ以上にタクを焼いてくる。  身動きできなくなるほど欲しがられて。     食らいつくされる。  音を立ててタクの精液飲み干しながら、少年はタクに微笑む。  タクが快感を得ているのが、嬉しくてたまらないように。  そう、やりすぎてしまって、タクを何度か殺しかけているが、少年はタクの快楽こそを優先させてる。  そう、大体、アルファでもオメガでも、ベータでも、少年には選びたい放題で、タクなんかとする必要はないのに。  また少年の指がいやらしく動いたなら、タクの性器なんて簡単に勃起する。   指だとは思えないような、その動き。  手のひらでしめつけられ、指で蠢かれる。    「タク・・・タク・・・」  少年の声が熱っぽい。  キスされ、教えられる。  どれだけタクが欲しいのかを、    酷い。    そう思う。  ワケがわからないくらい強くて。   信じられないくらい綺麗で。  有り得ないくらい欲しがられて。    そんなの。  心が動かないはずがない。    でも、こんなの、公平じゃない。  アルファを嵌めて柔らかく緩んだあの場所に。  まだ殺したアルファの精液が残るその場所に取り込まれる。  こんなの違うと思うのに。   少年が殺して、タク埋めたアルファの精液すら、快感としてその孔の中では感じるなんて。  狂ってる。  「タク・・・好き・・・」  そうささやかれる声がこんなに甘いなんて。  「タク・・・タク・・・」   少年が甘く身体を揺する。  タクを追い詰めすぎないうに加減して。  うぁっ  うふっ  泣いて叫んで狂ってるのはタクだけなのに、快楽はさほどでないはずだろうに、少年はうっとりと音楽に身を任せているかのやうに陶酔している。  こんなの違う。  なのに。  なのに。  タクは少年に向かって腕を伸ばしてしまう。  惹かれたくなんかない。  何もかもが違う。     でも、でも。     タクへの快感だけを紡ぐ少年が。  それでもそれでも。  どうしようもなく。  認めたくなんかなかった。  なかったのに。     

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