76 / 174
第76話
タクにはもう何もわからない。
いや、わかってたことが一度でもあっただろうか?
この少年が現れてから。
「今日からここが俺とお前の寝室だ」
そう言われた。
少年に巨大な寝台に、
アルファのための寝台の上に押し倒され、いつものようにタクは泣くことになる。
「アルファになりすますって・・・権力ゲームって何だよ!!」
タクは聞くが、あっと言う間に裸に剥かれ、股間を咥えられていた。
「ああっ・・・止め・・・ああっ」
タクは泣く。
でも、結局いつものように喘ぎ始める。
少年の舌や唇の気持ちよさに、逆らえない。
腰まで揺らしてしまう。
咥えたままこちらを見上げてくる捕食者のような目に怯えて、でも、もうそれにさえ感じてしまう自に絶望する。
少年は見せつけるように、その真っ赤で綺麗な舌でタクの裏筋を舐めていく。
金色の目がタクを刺す。
欲しがられていた。
欲しい。
欲しい。
凄まじい餓え。
それは魂さえ差し出せと迫る悪魔のよう。
美しい目。
強い目。
こんなにも求められるのは、アルファがオメガを求めるかのようで。
それはとても怖い。
「嫌だぁ」
タクは泣く。
そんな風に欲しがられるのは怖い。
「・・・心配すんな。俺はアルファにも負けねぇ」
少年は見当違いのことを言い始める。
そんなことは心配してない。
アルファを殺してるのを何度も見てる。
白面の死体を片付けたのもタクだ。
庭に埋めた。
相当深く掘らなければならなかった。
アルファはでかいから。
誰もそんな汚れ仕事はしてくれない。
するのはタグだ。
「お前がもう俺のことを心配しなくてもいいようにする。この世界からアルファを消しでやる」
少年の言うことは、いつだってタクには信じ難いことで。
大体、支配者達がしている支配ゲームなんて、ベータは知らない。
ベータには関係ないことで。
「気持ち良くなってろ・・・なぁ?泣くなよ・・・」
ささやかれ、先の穴を舌で責められた。
背中を反らして耐えるタクを、少年は食い入るように見つめてくる。
なんでそんなに欲しがる。
なんでオレなんだ。
なんでオレ・・・。
タクは怖い。
怖い。
強く吸われて射精した。
身体を震わせ、感じ続ける間も舐められ、快感で焼かれる。
でもその瞳がそれ以上にタクを焼いてくる。
身動きできなくなるほど欲しがられて。
食らいつくされる。
音を立ててタクの精液飲み干しながら、少年はタクに微笑む。
タクが快感を得ているのが、嬉しくてたまらないように。
そう、やりすぎてしまって、タクを何度か殺しかけているが、少年はタクの快楽こそを優先させてる。
そう、大体、アルファでもオメガでも、ベータでも、少年には選びたい放題で、タクなんかとする必要はないのに。
また少年の指がいやらしく動いたなら、タクの性器なんて簡単に勃起する。
指だとは思えないような、その動き。
手のひらでしめつけられ、指で蠢かれる。
「タク・・・タク・・・」
少年の声が熱っぽい。
キスされ、教えられる。
どれだけタクが欲しいのかを、
酷い。
そう思う。
ワケがわからないくらい強くて。
信じられないくらい綺麗で。
有り得ないくらい欲しがられて。
そんなの。
心が動かないはずがない。
でも、こんなの、公平じゃない。
アルファを嵌めて柔らかく緩んだあの場所に。
まだ殺したアルファの精液が残るその場所に取り込まれる。
こんなの違うと思うのに。
少年が殺して、タク埋めたアルファの精液すら、快感としてその孔の中では感じるなんて。
狂ってる。
「タク・・・好き・・・」
そうささやかれる声がこんなに甘いなんて。
「タク・・・タク・・・」
少年が甘く身体を揺する。
タクを追い詰めすぎないうに加減して。
うぁっ
うふっ
泣いて叫んで狂ってるのはタクだけなのに、快楽はさほどでないはずだろうに、少年はうっとりと音楽に身を任せているかのやうに陶酔している。
こんなの違う。
なのに。
なのに。
タクは少年に向かって腕を伸ばしてしまう。
惹かれたくなんかない。
何もかもが違う。
でも、でも。
タクへの快感だけを紡ぐ少年が。
それでもそれでも。
どうしようもなく。
認めたくなんかなかった。
なかったのに。
ともだちにシェアしよう!