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第84話

 アルファは群れない。  アルファは単独で動く。    だが。  全く交流しないわけではない。  敵というものは。  愛しいものでもあるからだ。  鮮やかな何色にもなる羽が輝く。   花が咲き誇る庭に降り立った。  【神鳥】のアルファは呆れたようにため息をついた。  カチカチ。      嘴を鳴らしさえした。  このアルファは美しい鳥の頭と翼を持っている。  上半身は逞しい男のものだが、膝から下は鱗のある鳥の鉤爪のあるソレ、だ。  鮮やかな羽は何色もの色をグラデーションにし、光の加減で色さえかわる。  目は人間のものて、その瞳も万華鏡のように色彩をかえていく。  「無防備すぎるにもほどがある」  神鳥は呆れた。  黄金のアルファは庭にあるアルファ用の巨大なベンチに座っていた。      その番のオメガと一緒に。  この屋敷には何のセキュリティーもなかった。  まあ、本気のアルファの侵入を止められるセキュリティなどないが、何のセキュリティーもないというのは有り得ない。  最近噂の白面のアルファの家などは要塞らしいのに。  だが。  まあ。  確かに。  このアルファの屋敷に侵入しようと思うベータは  やことろ。たて皆無だろうし、アルファでもそうはいない。    【黄金】は肉弾戦では負け知らずだ。    アルファは負けるのを嫌う。   肉弾戦ならなおさら。  無意味に殺しあって、滅ばないために【支配ゲーム】を作り出した。  だが、やはり。    最後は肉体と肉体の戦いになる。  【黄金】は強い。  とてつもなく強い。    序列2位の【白面】も強さを誇るが、【神鳥】は【黄金】は特別だと思っていた。  黄金は強い。  ああ、強い。  いつかいつか。  神鳥は黄金と戦うことを楽しみにしていた。    殺し合い、その肉を引きちぎり、心臓を嘴でえぐり出し、食らうのを。  でも。   それは今じゃない。、   一度しかない時になる。  そのタイミングは大切にはからなけばならない。   ただ、今日は愛しい敵に会いに来ただけだった。  いつものように。  「お前はいいとして、お前のオメガが襲われたならどうするんだ」  神鳥は黄金に言った。  黄金は膝の上にオメガを寝かせていた。  まだ幼いオメガは泣きつかれて寝ていた。  何に鳴いて、何に疲れたのかは、神鳥にだってわかる。  オメガといる時は自分だってそうする時だからだ。  貪る以外ない。  優しい手つきでオメガの髪をなでながら、黄金は笑った。  「コイツが人に襲われたなら、その時はその時さ。連れさらわれたり、犯されたりしたなら、それはそれで仕方ない。もちろん、私のモノを狙った以上は報復するだけだがね」  愛おしげに髪を撫でるのに、その言葉には全く優しさはない。  セックスしているところも見たことがある。  というより見せつけられた。  まだこのオメガが来たばかりのころ。  嫌がるオメガを神鳥の前で何度も何度も黄金は犯したのだ。  黄金がそうしろと言ったならそうすることを教えこむためだけに。  行為自体は酷いものではなかったし、むしろ言葉も態度も優しくはあったが、それは間違いなく酷いことだった。  感じ乱れる姿を神鳥にみせつけ、それに酷く傷つくオメガをさらに犯して、黄金は楽しんでいた。  終わった後、泣きじゃくるオメガを優しくあやしはしていたけれど、謝ることなどしなかった。  神鳥は自分のオメガをそこまで追い詰めたいとはおもっていないから、呆れたものだった。  神鳥のオメガは、番ではない。  他のアルファから奪った年上のオメガだ。  とても大切にしている。  子供を産ませることも出来ないが、他のオメガを娶るつもりもない。    初めて殺したアルファの番だった。  肉体同士の戦いになり、殺したアルファに向かって泣きながら走り覆い被さったオメガに不覚にも一目惚れした。  まだ若いアルファだった神鳥はセンターで番を探す代わりに、そのオメガを娶った。  殺したアルファの隣りで、その番を犯すのは実はそんなに珍しいことではない。  戦いで興奮したアルファがオメガを欲しがるのは仕方ない。  だが、そのオメガを娶るのはあまりないことだ。  子供を産ませられないし、ほかのアルファを慕うオメガよりは、自分だけを見つめるオメガの方がアルファは好きだからだ。  番のいないアルファがしばらくそのオメガを手もとに置くことはある。  自分の番が見つかるまで。  神鳥は違う。  そういうのではないのだ。  アルファとオメガのフェロモンで決まりまくったセックスはそれはそれでいい。  オメガのフェロモンに当てられ、こちらのフェロモンに狂ったオメガを抱くのはそれはそれで。  だが、フェロモンに狂わないクリアな頭で、でも純粋な快楽に狂うセックスの方が好きなだけだ。  まして、昔のアルファを思い出して、泣いたりされたなら、それを壊しながら抱くのがさらにいい。  なんなら昔のアルファにどうされたのかを言わせながら同じことをしてやるのもいい。  昔のアルファを慕っても、今蕩けるのは自分にだっていうのがいい。  「サディストだな」  と黄金に言われるのだけは納得いかないが。  黄金ほど酷く追い詰めたりはしない。  でもアルファは、オメガを壊れるまてま追い詰めてしまうものなのか、とは思う。  黄金の方が酷い。  自分は心が本当に手に入らなくてもいい。  むしろ、その距離感から自分のオメガを愛してる。  黄金は酷いことをたくさんオメガにしておいて、でも、オメガに自分を慕わせる。  しかもオメガを愛していないのだ。  黄金が愛しているのはただ一人。  それも知ってる。  黄金は大切な敵だからだ。  いつか倒して殺す敵だからだ。   だから黄金は愛しい。  多分、黄金を殺した後、このオメガも犯すだろう。  連れ帰ったりはしないが。  自分にはもう大事なオメガはいるのだし。  それまでにはもう少し育っていて欲しかった。  神鳥はいくらオメガでも子供は好まない。   大人のオメガか好きなのだ。  「そんな子供がいいか?」  神鳥は黄金に聞く。  どうも、華奢すぎる身体はイマイチなのだ。  「代わりとしてだからな。アレがいなくなった頃と同じだ。悪くない。だが、代わりにもならないな」  黄金の声は優しい。  オメガにはそれが聞こえただろう。  ピクリと身体を震わせた。  だが、黄金の指はとにかく優しかった。  髪を撫で、頬を撫でる愛しげに。  「・・・お前は年上好きだからな」  黄金は苦笑した。  神鳥は黄金が好きだ。  いつか殺し合うかと思えば思うほど好きだ。  「白面の番はお前好みじゃないのか」  黄金が面白そうに言ってきた。  これが黄金の手なのはわかってる。  黄金はアルファさえ操る。  黄金は狡猾この上ないアルファだ。  卑怯ではない。    アルファに卑怯はない。      だが、狡猾なのだ。  確かに。    神鳥は白面の番に興味があった。  誰よりも好戦的だった白面がそのオメガを手に入れてからは防衛一辺倒になったと言われている。  白面はもう、5年ほど、誰にも姿を見せていない。    白面は肉弾戦を嫌がる。      避けてきている。  理由は、オメガから離れたくないからだし、自分の領内に入られることを嫌う。  オメガを見られることさえ、白面は嫌なのだ。  どんなオメガだ。    喰ってみたい。  そう何度か思っていた。  大人の。  もう子供も生んでいるオメガ。  そういうのは好みだった。  ちゃんと成熟した肉体。  興味はある。  ただ、白面は有数の実力者。  アルファと言えども、命は一つ。  身体だって無事ですまない。  何より、神鳥には戦いたい相手がいるのだ。    黄金と戦いたい。  白面相手では無事に済まないし、失った身体のバーツは戻らないのだ。  慎重にはなる。  「オレと白面を戦わせて、戦力を削ぐつもりか?」  神鳥は黄金に言った。  こういうアルファらしからぬところが黄金にはある。  「でも、好きだろ?・・・年上の他人のオメガ」  黄金は笑う。  優しく優しくオメガをあやすように撫でながら。  おそらく、酷く苛められたに違いないオメガは、与えられた優しさに必死でしがみつく。  黄金のシャツを握りしめ、身体を震わせて泣いている。  黄金に慰められて。      傷つけたのは黄金になのに。  「確かに。だが、白面相手はな。お前とする前に身体を損ないたくない」  神鳥は正直に言った。  白面が愛して止まないオメガを、白面の死体の隣りで犯すのはたまらない魅力だった。  それは大好きな遊びだ。    めったにできる遊びではない。  アルファ同士の肉弾戦はあまりない。  殺し合いになるからだ。  だが、殺したアルファのオメガを喰らうのは神鳥にとって最高の達成感を与えてくれるものだ。  だが、誓っていう言うが、連れ帰って愛したのは一人だけだ。  だが。  白面のオメガは気になる。  白面の執着を一身に受けたオメガ。  大人の、たっぷり愛された身体をしているオメガ。  これはこれで。    白面の死体の隣りで白面のためだけになっている身体を、無理やり自分のものにしたい。  それは確かに楽しいだろう。  「気になるんだろ。・・・それに最近の白面がおかしいとも思わないか」  黄金は楽しそうに言う。  「オレで何かを試そうとしているのか」  神鳥はニヤリと笑う。  黄金の隣りに腰かけた。  自分のアルファ以外は怖いのがオメガだ。  黄金の番はさらに黄金にしがみついた。    好みではないが。  黄金のモノで貫かれ快楽に狂っていたのかと、そして、今は黄金の指に慰められている、そう思うと何かくるものがある。  「確かめたいことはあるが、私でも白面は簡単に手を出せない、だからお前が戦ったならこちらには都合がいい」  堂々と黄金は言った。  アルファらしくはないが、神鳥は黄金のこういうところは嫌いではない。  面白い。  それに神鳥もまた、アルファらしくない。     黄金の膝の上で丸くなる幼いオメガに無造作に触れた。  着ている簡単なシャツとズボンの中に手を入れて。  黄金は思った通り。      止めなかった。  「借りていいか?・・・白面とは戦ってやるから」  率直に言った。  黄金に抱かれたばかりのオメガ。  それに興奮していた。  このオメガは黄金を慕ってる。  そこにも。  オメガの目が見開かれた。   綺麗な金色の目が哀願するように黄金を見つめるのがたまらなく神鳥を刺激した。    「いいよ。何ならここで見ていてやろうか?」  黄金はあっさり言った。  ここは残念。  ここは執着していて欲しい。  だが、黄金に見つめながら、犯されるオメガというのは・・・神鳥としては最高だった。    「お前とは嫌だと言うまでしてやるから見てな」  神鳥は笑った。  「嫌・・・」  オメガが泣いた。  助けてほしいと黄金をみつめながら。  だが気にせず、裸に剥く。  思った通り乳首も腫れて。  孔も乱交に熟れきっていた。  他人が犯した後にこそ神鳥は興奮する。  黄金はあっさりベンチをふたりにゆずり、土の上に腰かけて、その美しい青い単眼で、神鳥と自分のオメガを見つめる。  「小さい尻だな・・・まだ硬い」  大人好みの神鳥は文句を言った。  神鳥の嘴が開かれ、巨大な舌が伸びてくる。   それは、オメガの孔を一気に犯した。  「嫌ぁ!!!」  オメガは自分のアルファにむかって手を伸ばし、助けを求める。  熱い長い、太い舌は、まだ性交が終わって間のない孔に再び熱を灯していく。    「嫌っ、嫌!!!」  オメガは泣いた。  愛されてはないとしても、正式な番なのだ。  妻なのだ。  黄金だけのオメガであるはずだ。  でも、オメガが見つめる黄金のアルファの目はとても静かだった。  こんなに静かで青い瞳はこの世界のどこにもなかった。  「大丈夫。何も変わらないよ。ただの・・・セックスだ」  慰めるように黄金は自分のオメガに言ったのだ。  伸ばした指は掴まれることはなく。  その目は冷たかった。  そして、中でのた打つ舌は熱くて。  「ああっ・・・ダメぇっ・・・」  舌で貫かれる感覚にオメガは感じ初めていた。              

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