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第91話

 勝負は互いの領地ではない場所で行われる。  悪名高い【双頭のアルファ】のように、何の予告もなくオメガを攫って犯すことを目的とする外道のアルファもいるが、基本的にアルファ達は正々堂々と果たし合いをすることを好む。  【双頭】も戦いからは絶対に逃げたりはしない。  ただ、先にオメガを犯すことをするだけだ。  彼らにしてみれば、アルファを殺す、オメガを犯す、その順番が先か後だけの問題で何もかわらないと思っているのでそうしていただけのことなのだ。  双頭は少年の策略により【千里眼のアルファ】に殺された。  今度は少年が、【神鳥のアルファ】と戦わないといけない。  【白面のアルファ】として。  だが、これは無理だ。  少年の身体能力はオメガの中でも高く、人間とは比べものにならないが、アルファとでは話にならない。  相手は銃火器すら効かない化け物なのだ。  現在よりも高度な文明を誇っていた過去の人類はアルファ達の前にあっさり屈服したのだ。  数の多さでは比べようもなかったのに。  一つの地域をアルファごと壊滅させるような戦法さえ、最終的には意味がなかった。  アルファは殺戮し、犯し、破壊した。  人類はただただ恐怖した。  そして、凶暴な邪神よりは、支配者である神となるなら、とアルファを喜んで受け入れた。    人類は今ではアルファ達に文明の程度さえ管理されている。  不必要な科学力を持たぬよう。  この世界はアルファに生かされているからこそ、あれるのだ。  神鳥は上機嫌でその場所に降り立った。  首都からはかなり離れているが、神鳥の翼は強く速い。  数時間で済んだ。  いくつかある戦いのための中立地帯の一つであるそこは、山の中にあった。  戦いを申し込まれたアルファが選択出来るのだが、すぐ山の中に逃げ込めるこんな場所を白面が選ぶのは意外だった。  空を飛べる自分と戦うのなら、木などの障害物がある方がよいと思ったのか。  だが、地を駆けるのに利がある白面の4足では、木がある場所はさほど利があるとも思えない。  岩場が多い高所で、速く遠くまで飛べるが小回りがきかない神鳥を翻弄するべきだと思うのだが。    でも、まあ、神鳥にはどうでもいい。  神鳥は小細工が嫌いだ。  ただただ相手を壊滅させるのみだ。  白面を殺して。  心ゆくまで殺し合ってから殺して千切って。  それから、  白面のオメガを犯して楽しんで。  そして、家へ帰ろう。  可愛いオメガが待っている。  それに、これからは黄金のところへ行く度に黄金のオメガも犯していいってのは楽しい。  黄金が一番変態だ。   アイツは自分のオメガが犯されるのを見てるのが大好きだからな。  あの趣味だけは理解できない。  オメガに執着するアルファらしくない。   まあ。  黄金は変わっている。  黄金だけは何を考えているのかわからない。  いつか殺し合う時。  全力で戦い合う時。  その心や考えに触れられる瞬間があるのではないか、そう神鳥は考えている。  いつだって敵は愛しい。  アルファにとって戦いは、相手に深く触れる一番の方法なのだ。  オメガとするセックスよりも。   アルファ同士の殺しあいこそが、相手へと深くたどり着く方法。  神鳥はそう信じていた。  だから。  白面を恋しく待っていた。  だから、白面の代わりに現れた者を見たとき、神鳥は激高したのだった。        

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