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第105話

 泣いてる少年に驚愕したのはタクだった。  「ど、どうした・・・」  オロオロと下から手をのばしてくる。  その手を掴んで、その手の平に顔をこすりつけ、少年はさらに泣く。  幼児みたいに。  「なんでもねぇよ!!」   でも、嘯く。  でも、腰を揺らして甘えてくる。  繋がったままで。  悲鳴を上げるのはタクだ。    また甘くてツライ快感がやってくる。  女の子とした時だってこんなになったことはない。  オメガは女の子とは全然違う。  オメガは怖いくらいスゴい。  女の子達より貪欲で、全身全霊で欲しがり、求めてきて、与えてくる。  食い尽くされる恐怖に怯え、でも、それ無しではいられなくさせられてしまう。  でも、今日は違った。  だって。  あの少年が泣いてる。  子供みたいにしゃくりあけながら、でも腰は辛辣なまでにこちらを責めてくるけれど。  うぐぅ  タクは呻く。  締めながらそんな風に回されたなら。  蠢かれたなら。  頭がおかしくなりそうな中で、それでもタクは必死だった。  「どうした・・・どうしたんだ」  どうにか声に出す。  身体なんかもう少年のおもうままだ。  なんなら死ぬまで射精させられるたろう  ケツに突っ込まれるのだって、少年が望めば最終的には自分から尻を差し出しそうだ。  まだ少年が望まないだけで。  もう乳首だけでイケる身体にはされてるのだ。  だけど。  今。   少年は泣いてる。    泣いてるんだ。  タクは必死で起き上がり、繋がったまま、少年を抱きしめた。     散々イカされ痙攣させられ続けた結果、腹筋は限界を迎えていたが、それでも起き上がった。  抱きしめたのは、少年を不用意に動かさせないためでもあった。  少年に腰を揺らされたなら、タクの正気なんて簡単に霧散してしまう。  「どうした・・・泣くな・・・」  オロオロとタクは言った。  幼児のような顔をして少年が泣いている。  その頭を胸に押し付けた。  髪を撫でる。  少年が少し動くと、タクは喘いでしまう。  少年の中に包まれているから。  「あんなのは・・・違う・・・俺じゃない・・・」  少年は泣いた。  何に泣いているのかはわからなかった。  少年が何を考えているのか、タクにわかったことなどはない。    少年は震えていた。  タクは切なくなる。  忘れてしまいそうになるけれど、少年は子供だ。  花とそんなに変わらない。  少年も花も、自分達オメガはもう大人なんだと言うけれど。  そんなわけがない。  でも、その子供と身体をつなげている自分に嫌悪も感じてしまうけれど。  少年がタクの胸に顔をこすりつけて泣いている。  「俺は犯されたりなんかしてない・・・俺が犯すんだ。俺が相手を好きなようにするんだ・・・」  少年が泣きながら言う。  まあ、その通り。  タクは毎日のように犯されている。  少年の好きなようにされている。  やめてと言って、やめてもらったこともない。  でも。  「あんなの・・・あんなの・・・俺じゃねぇ」  少年はタクにしがみついた。  幼児のように。  タクは黙って抱きしめた。  花から聞いていた。    少年が番であるアルファのフェロモンを使って神鳥に抱かれたこと。  自分の意志を簡単に超えてしまうフェロモンを使われてのセックスは。  この気位の高い少年には。  とても苦しいことなのは、もう分かってた。  でも、少年はそうなることも見越した上で神鳥に挑んだのだと花は言っていた。  少年の番と神鳥は交流があるから。  少年の番は、少年以上に悪趣味(花はもっと別の言い方をした)なのだと。  それでも少年は神鳥に、アルファに挑んだのだ。  殺すために。  タクは泣けてきた。  この人を平気で踏みにじるくらいの気位の高い、傲慢な少年が、飼われるオメガとしてどんな扱いを受けてきたのかと思うと。  危険な野生の獣を、鎖や薬で無理やりペットにするようなものだ。  怒り、絶望し、苦しんだのだろう。    少年は逃げ出したのだと、花は言っていた。  「自分だけで逃げ出したオメガは多分、お兄さんだけ」  そう花は言っていた。  アルファから逃げれるオメガなどいないから。  アルファに耐えられないオメガは、タキの母親、白面のオメガのように壊されていくだけだ。  タクはポロポロと泣いた。  少年を抱きしめながら。  少年に犯され、攫われたも同然で、人生まで変えられてしまった。  でも。  タクは。  タクは。  少年を抱きしめる。  嗚咽しながら。  少年はタクの胸の中からタクを見上げた。  もう泣いてなかった。  嬉しそうに嬉しそうに笑っていた。  「愛してる、タク」  少年の言葉がタクには痛い。  この子には。  その言葉がどれほどの意味かあるのか。  それがわかっているから。  自分の思いは少年のそれに見合うものなのか。  そして、ここまで流されてしまっていいものなのか。  タクは苦悩して。  苦悩して。  でも、少年を抱きしめたまま、その小さな綺麗な唇に自分の唇を重ねた。  少年がキスされながら笑う。  その笑顔は、淫らに身体を繋いでいる、こんな場面に似つかわしくない、無邪気なものだった。  優しいタクのキスの後。  少年の目がズルく光った。  タクは背筋に寒気が走る。  「タク。タクは可愛いなぁ・・・」  その声はもういつもの少年で。   「もう・・・無理」  タクは顔をひきつらせながら言う。  「うん・・・気絶するまでしような」  少年は腰をゆすり始めた。  タクは少年の身体から手をはなし、逃げようとしたけれど、少年の甘い揺すりに声を上げて、身をよじらせてしまう。  「可愛いなぁ・・・ホント可愛い」  少年がうっとりと囁く。  許して、許して、もう、無理無理!!  そう泣くタクが解放されたのは数時間後のことだった。    

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