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第119話

血まみれのベッドを撤去し、カーペットを取り替え、作業は終了した。 血や排泄物などをあつかうため、衛生上から顔まで覆ってゴーグルまでつけて作業しているが、終了前にはちゃんとそれらを脱いで、消毒用の服に着替えて、室内を消毒するまでがセットだ。 後は違う業者が壁を塗り替えたり、カーペットを引き、新しいベッドを入れるだろう。 消毒を終えた後、お優しい黄金様から差入れさえあった。 留守にしているが、お茶を出すようにおっしゃられたとのことで。 がらんとした片づけた部屋で、お茶と菓子が振る舞われる。 手や顔さえ洗えば、死体を片づけた後でも平気でお茶も菓子も飲める。 死体の片付けは日常だ。 腸を片付けた後でもお茶もお菓子も美味しくなる。 黄金の領地では半年に1度だが、となりの領地、その隣りの領地を合わせたら、仕事は毎日のようにある アルファの領地は国内外、各地に分散していて、領地=国や県や市や町などの行政とは無関係だ。 ベータはあくまでも、アルファに借りることを許された土地で生かせてもらっているのだ。 この世界は全てアルファのものから。 週に3、4人はベータの死体を片付けて、アルファの屋敷を綺麗にする。 そんな仕事がなりたつ世界。 お茶もお菓子も美味かった。 仕事をした後の充実感の後、飲むお茶と菓子。 片付けたものは。 少年に良く似た、ベータの子供だったのに。 間違っている。 笑ってお茶を飲みながらタクはおもった。 間違っている。 タクの心は叫んでいた。 誰も、こんなものみたいにあつわれるべきじゃないんだ。 そう叫んでいた。 でも穏やかにお茶を飲みながら、タクはそんな彼らをみつめる存在に気付く。 明るいウェーブのある茶色の髪。 金色の瞳。 それは死体に似ていた。 片付けた子どもに似ていた。 いや、タクが毎日のように抱いていたあの少年に似ていた。 さっき片付けた死体になったベータの子供よりも。 でも、殺した子供や少年よりももっと幼い、花よりも幼いくらいだ。 やっと10才、11才といったところだ。 でも似すぎていた。 少年に。 鋭い刺すような眼差しと、皮肉な笑みはないけれど。 開いたドアから、タク達業者を珍しそうに覗いていた。 わかった。 これが。 黄金の【今の】番オメガ。 タクはお茶を飲み干し、ニコニコした微笑みを顔に貼り付ける。 少年の読み通りだった。 外の世界に憧れるオメガは絶対に覗きにやってくると。 外の人間を観たくて。 だから、オメガとは気付かないフリをして、タクは声をかけるのだ。 「どうしたんだ?ここで働いている人の子供か?」 タクの笑顔にオメガは目を丸くする。 子供として扱われたことがないから。 でも、嬉しそうに笑う。 タクは部屋にオメガを招きいれる。 業者達も気づかない。 誰がこんな子供がオメガと思うのか。 確かに信じれないほど綺麗な子供ではあっても。 オメガを間近でみることのあるベータなどほとんどいないのだ。 こうやって。 オメガは外から人が来た時には、オメガじゃないふりをして、外の社会と触れ合っていたのだ。 「お茶飲むかい?」 タクはオメガに話しかける。 オメガはキラキラした目で頷く。 ターゲットに接触。 タクはこれを待っていたのだ。

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