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第122話

「ビビった・・・怖かった・・・」 タキは花を抱きしめて、震える。 花の前では強がらなくてもいい。 タキは冷たく冷えた身体を花の体温で温めようとする。 花は慰めるようにタキの胸にほおを擦り付ける 花の身体はタキが抱きしめるにはちょうどいい。 熱くて甘い匂いのする花の身体はタキにとっては精神安定剤だ。 「あのアルファはなんなんだ。オレが知るどんなアルファともちがう」 タキは怯える。 黄金と言葉を交し、握手さえした。 黄金が白面の正体、タキの後にいるのが少年であることも知っていると分かっていた。 それでも、素知らぬふりをして、黄金と挨拶をした。 アルファの名代として。 タキはアルファの奇怪な姿にも慣れている。 アルファの父親には顔が無く、奇怪なケンタウロスのような、四足歩行をするアルファだった。 アルファの中でも奇怪な姿を誇っていた。 それに、父親がとうとう屋敷を出ることなく母親を休むことなく犯すようになってらは、父親の代わりにアルファ達相手のメッセンジャーさえ務めてきた。 だから。 アルファには慣れていたはずだった。 恐ろしくはあっても。 「アイツは違う。何かがおかしい」 タキは震える。 むしろ黄金は見慣れたアルファ達よりは人間に近く、美しかった。 黄金の肌をした巨大な身体は彫られた彫像のようで。 その身体を民族風の美しい刺繍に彩られた衣装に身を包み、流れる赤い髪は火のようで、一つしかない巨大な瞳は深い湖水のような青だった。 古の神のように美しいアルファ。 その整った唇からもれる声さえも。 深い夢まで届くような声で。 だが、タキは黄金を恐ろしいと思った。 狂った父親も恐ろしかったが、そんなものとは比べようもなかった。 「父上とは、競っている間柄だが、私達は仲良く出来るはずだよね。アルファとアルファの間のことは他の者には関係ないことだ。例え君の父上を殺すようなことがあったとしても君とは仲良くしたい」 黄金はアルファらしいことを言った。 そう、殺し殺されてもそれはアルファ同士のこと。 これくらいなら、どのアルファなら本気でいいそうなことだ。 「私のオメガを入学させる。良かったら仲良くしてやってくれないか?中等部になるから高等部の君とは一緒になることはないと思うが気にかけてやってくれ」 黄金のその言葉に寒気を感じた。 これはアルファのすることではない。 アルファはそういうモノではない。 父親はやり過ぎたが、だれにもオメガを見せたくない、そんな独占欲の塊なのが、アルファなはすだ。 「はい。ボクでよければお力になります」 気味の悪さを感じながらそれでもタキは笑顔で答えた。 「そう」 黄金は美しく微笑んだ。 その目の青さに吸い込まれるようだった。 「学校内では風紀の問題があるからダメだろうけど、良ければたまには君の屋敷に連れて行って、【使ってくれて】も構わないよ」 ニコニコと黄金は言った。 「はあ?」 タキは言われた意味がわからなかった。 「オメガを使うことなど、君たちベータには中々ないだろう?私はオメガをアルファが独占するのはどうかとおもっているんだ。君のお友達でも、【使ってみたい】子がいたら誘ってくれて構わない」 黄金の言葉の意味を理解するのに時間がかかった。 タキは顔色を変えた。 だが、ここは抑えなければならないことはわかっておいた。 「オレの母親はオメガです」 タキはそれだけを言った。 そして、恋する花もオメガだ。 オメガを本当に物あつかいするアルファがいるなんて思わなかった。 少なくとも、アルファ達はオメガを愛していると思ってはいるはずなのだ。 それが、本当の愛なのかは置いておいて、少なくとも、こんな風にオメガを扱うアルファなど、タキは知らない。 「君の母上も、オメガもバカにしたつもりはなかったんだよ。そうとられたならすまない。私はオメガにもただ1人としかSEXさせないような狭量なアルファじゃないだけだよ。私のオメガだって君みたいな綺麗な子となら嬉しいだろうと思ってね・・・君だってオメガともうしてるんだろ?オメガの味はどうだった?」 低い声で笑いながら黄金は言った。 タキは真っ赤になった。 その日の朝方まで花に何度も奥まで穿たれていたのを思い出してしまったのだ。 何度もイカされ、ゆるしてもらえなかったのを。 花とタキの関係までは黄金が知っているはずがないのに。 いや、相手が花だと思ってないのかもしれない。 このアルファは。 黄金は。 少年には執着している。 アルファらしく。 黄金の目が測る。 タキの目から何かを測る。 でも、黄金が何を測っていたとしても、タキはやるべきとをやるだけだ。 少年に命じられた通りに。 「ご冗談を。ベータはオメガに手を出したりはしませんよ。それに私の知るオメガは母だけですから。さすがに、貴方を我が家に招待できませんが、学園にお越しの際はぜひ、お茶でも御一緒させて下さい」 タキはにこやかに言った。 タキから何かを測れたならそれはそれでいい。 少年は黄金は嘘が分かると言っていた。 それにどうせ向こうは全部知っている。 黄金は、そのくせアルファたちにオメガが白面に成りすましているとは知らせないのだ。 他のアルファのことには興味がないアルファ達でも、オメガがアルファになりすますことだけは許さないだろうに。 アルファ総出で攻撃されたなら、こちらはそれで終わりなのに。 黄金が黙っている理由は見えない。 少年にもわからない。 だが。 「近い内に白面が【決着をつけよう】、と申しております。ボクはこのメッセージを伝えるためにここに来ました」 タキは白面、少年からのメッセージを黄金に伝えたのだった。 それがこの日のタキの役割だった。 「笑ったんだよ、アイツ。笑ったんだ」 タキは震えながら花を抱きしめている。 「アイツ、違う。黄金だけは違う。アイツはおかしい」 タキは花に伝えきれない。 黄金の笑顔がどんなに恐ろしいものだったか。 アルファは恐ろしい。 アルファは人間を殺しても平然としている。 それがアルファだ。 だけど。 黄金は違う。 少年を見逃している理由も、自分のオメガに酷い理由も。 何かもっと理由があるのかもしれない。 だって。 その笑顔は あまりにも嬉しそうな、輝くばかりの笑顔だったからだ。 だから恐ろしかった。 「花もアルファ殺しをするんだろ・・・オレ怖くて仕方ない」 タキが泣く。 何もわからない。 少年が考えていることも、黄金が考えいることも。 花まで今度はアルファ殺しに加わって。 アルファに犯されながら、隙をみてアルファの血管を裂くか、少年から作った毒を打つのだ。 危険この上ない。 しかも本当はだれにも触れさせたくない花をアルファに抱かせないといけない。 その先にあるのは何なのか。 もうタキには、タキごときではわからない。 花はタキの頬を撫でて、優しくキスをする。 「いい?タキはボクのだよ。いい?タキはボクだけの。だから、いつかはボクもタキだけのものになる。だから。だから。そのためにもやり遂げよう」 花の言葉を信じるしかタキにはない。 「可愛い・・・ボクだけのタキ」 花がタキの胸を吸いはじめる。 もう花に性器にされたその場所で、タキは不安をごまかすかのよつに感じる。 タキは乳首を味わう花の頭を抱きしめる。 不安だから、 こわいから。 その日、タキはいつものように「もう無理」と泣いて許しを請わなかった。 気を失うまで花を欲しがりつづけた。

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