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第123話
「花。そうしてくれるか?」
少年に花は頼まれた。
断われないのだな。
そうわかった。
これは。
もう、自分にしか出来ないのだと。
「いいよ、お兄さん」
花は言った。
泣いていたかもしれない。
「ごめん、花」
少年も泣いていた。
花にさせることの過酷さを、少年が1番知っていたから。
抱き合った。
性的な意味はなく。
花と少年にとって、セックスは大したことではなかったけれど。
「ボクには。タキがいる。だから耐えれるよ、お兄さん。お兄さんにはその頃、誰もいなかったんだものね」
優しい花の言葉に少年は泣いた。
「俺もわからない。これでいいのかわからない。でも・・・」
少年の言葉を花は最後まで言わせなかった。
花は優しいキスをした。
そっと言葉を止めるだけの。
「タキにはいわないで。悲しむから」
花はそうとだけ言った。
少年は頷いた。
その気持ちはわかった。
ベータとオメガでは。
物事の捉え方が違いすぎる。
少年のタクはそれでも、珍しく達観しているが、タキはベータらしいベータだ。
たとえ、オメガに組み敷かれてはいても。
理解してくれないだろう。
オメガの愛は深いのに。
少年はそう思った。
オメガとは。
何なのだろう。
「お兄さん、その前にしてくれる?タキにはお願い出来ないから・・・ちゃんと挿れてね、ボクがお兄さんに挿れるのはなし。それはタキだけ」
花が強請った。
少年は頷いた。
花の制服のブラウスを脱がす。
微かに隆起した胸を撫で、そのもう立ち上がった淡い色の乳首を優しく舐めていく。
その繊細さに花は鳴く。
アルファとするときとも、ベータとする時とも違う。
何よりこれは、花を守るお守りなのだ。
「噛んでぇ」
花はすすり泣く。
少年はそうしてくれる。
スカートを巻き上げられて、下着を下ろされていた。
もう濡れている孔を指でなぞられ、ゆっくり、伝いあげられ、勃起している擬似性器も撫でられた。
その優しさに泣く。
「ごめん、花。ごめん」
少年が謝る。
「いいよ、お兄さん。いいんだ」
花は笑った。
少年が花を思ってくれているのは知ってた。
傲慢でワガママで、冷酷だが、少年は花を思ってくれてた。
それは知ってる。
花を解放してくれたのは、この人だ。
この人がいなければ、花は【千里眼のアルファ】の屋敷で飼われていただろう。
なんの疑問も持たずに。
「これで終わらせられるなら、ボクはいい」
花の言葉に、少年はノドをつまらせて、嗚咽した。
でもその手は優しく動きつづける。
オメガの感覚はアルファ以上に鋭い。
その感覚を駆使して、少年は花の感じるところをその指で見つけ出し、快感を捉えて、放っていく。
触れるそこから、作り出される快感に花はおぼれた。
オメガじゃ無ければ出来ないそれ、指の沈むその場所、そこから快感をつかみ出され、でも甘やかされ、ギリギリを揺蕩わせていく。
アルファのように死に近い快楽でもない。
タキがくれる、結び付きでもない。
これは。
オメガでしかわからない、オメガだけの結び付き付きだった。
花も少年を気持ちよくさせようとした。
指を少年の性器に伸ばした。
少年がその手をつかんでとめた。
「しなくてもいい。気持ち良くなっとけ。これは、お守りだ」
花の指を1本ずつ、やさしく吸ってくれた。
なめられるその舌の熱さと感触。
オメガの舌は淫らな性具だ。
それだけで、達するような。
精度の高い愛撫に、感度の高い身体が応える。
でも。
何より、これは大切なお守りだった。
花は少年がくれたこの感覚を抱きしめて、挑まないといけないのだ。
四つん這いになって、孔を犯された。
オメガに挿れられたのは花も初めてだった。
少年が身体を宥めてくれた時はディルドを使われたから。
少年は孔を使う方が好きなのだ。
でも、花のためにしてくれた。
「お兄さ・・んの・・・初め・・てもらっちゃ・・った・・・」
花は笑った。
充たされて。
「バカ」
少年が笑ったが、泣いていたかもしれない。
花は次の瞬間、オメガ同士ですることの意味を知った。
狂いのない正確さに泣き叫んだ。
何もかもが、1ミリもずれない、完璧な動きに花も同期した。
欲しいところに欲しいだけ、与えられるそれは、貪られるセックスとは何もかもがちがっていた。
「すごいな・・・俺はこっちは好きじゃねぇのに」
少年が喘いでいた。
花の孔に少年もおぼれているのだと分かった。
花はイク。
何度も何度も何度も。
少年もイク。
何度も何度も何度も。
お互いの身体が完璧にシンクロして、花は少年が放つ快感を受け取り、少年は花がイクのを同時に感じた。
2つの身体が1つの身体で、1人で快楽を貪る生き物になったようだった。
そして、きっとそうなのだ。
これは。
少年のやさしさ以外は何もない。
オメガがオメガと分け合うものは、それだけなのだ。
でも、花も少年も溺れた
この後のことを耐えるために。
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