124 / 174

第124話

「花に何をさせてる!!オレが気付かないと思ってたのか!!」 そう言ってタキが乗り込んできたのは少年の予想よりは早かった。 「大事な役目だ。花にしか出来ない」 少年は冷静に言う。 もともとタキに理解してもらおうなんか思ってもいない。 「アルファを殺すんじゃなかったのか?皆殺しにするんじゃ!!」 タキは叫ぶ。 「この屋敷内だからいいけど、そういうことを外で言うなよ。可愛い【息子】」 少年は薄く笑った。 白面の屋敷内。 白面に 成りすましているから、タキは少年の息子なのだ。 「何で花にあんな真似させてるんだよ!!」 タキはとりみだしていた。 「尾行したのか?」 少年が聞いてもも答えないからそうなんだろう。 だが、良くその現場を無事に見て帰れたものだ。 タキの追跡能力は思った以上に高いらしい。 オメガほどではなくても、アルファの感覚は鋭い。 監視や尾行などすぐ気付かれる。 ベータにしておくにはおしい、真剣にそう思った。 「あのために、オレをあちこちのアルファの集まりに顔を出させたのか。繋ぐために」 タキが怒りで震えてる。 「そうだ」 少年は認めた。 「花を。花をなんであんな風に?」 タキは泣いていた。 「そうしてもらう必要があるからだ」 少年はそうとしか答えなかった。 タキはこのところ花に会えなくなった。 でも、まあ、作戦などで花に会えなくなることはこれまでもあったから気にしてなかった。 メールはもらってた。 他愛のないメールに安心していた。 でも。 花に会いたくて。 姿をみるだけでよくて。 タキは花の姿をみるためだけに、花の学校の校門を見はってたのだ。 花からしばらくは学校に来ないでといわれてたから、変装までして。 作業着をきてヘルメットを被った電柱を検査している作業員など、近くを通る女学生達は気にも止めないだろう。 少年達と行動を共にするようになり、タキ自体が変装や追跡、監視をしたわけではないけれど、花やタクがしているのを見ている内に知識や方法をすっかりタキは身につけていた。 花を一目みたいだけだった。 自分がストーカーじみてるのは理解していた。 でも、見たら帰るつもりだったのだ。 花は校門でいつものように上級生の少女と別れた。 彼女も花の【相手】の1人で、タキの嫉妬の対象でもある。 恐らく、花は今日も学校のどこかで彼女を犯していたのだろう。  昼休みにでも、上級生が占拠している生徒会室ででも、上級生を組み敷き声を上げさせていたはずだ。 花はタキだけ、と言うが、それは女性はのぞくという意味だ。 オメガはアルファのために生まれたから、基本的に男性を好む。 彼女としているのは、学園生活に彼女が必要だからだというのは、 分かってる。 でも、花がその行為を楽しんでいるのも事実で。 オメガとベータの差をタキは感じている。 でも、少なくとも今日は花は彼女の迎えの車にのらなかった。 上級生の家にはいかなかった。 そんなことに安心した。 だが、花が乗り込んだ車はいつも乗る、タクが運転する車とは違った。 いつもなら花の家の運転手役であるタクが運転する車に花は乗る。 でも、今回は違う? 何故? 疑問を持った。 電柱から降りて、バイクを【調達】した。 もちろん違法行為だ。 これも、組織と行動することで学んだことの1つだ。 花を追った。 花の鞄に忍ばせたGPSで。 花は知らない。 花に送ったキーホルダーのマスコットにそんなモノがはいっているなんて。 ただ。 会えなくても、花の居場所を知りたかっただけ。 いつかアルファに殺されてしまうかもしれない恋人の居場所を確認したかっただけ。 アルファ殺しをするとは聞いてなかった。 だから追ってしまった。 着いた場所は、首都にある領地外にあるアルファの屋敷の1つで。 自動車の中で着替えただろう花が、後部座席から窓を下ろした外をうかがうのが見えた。 フードで顔や身体を覆うマントのような服。 オメガをアルファが外に連れ出す時の服だとわかった。 昔。 まだタキが小さい頃、ほんの偶に、父親が母親を外に連れ出す時にこういうものをきせていた。 オメガを人の視線から守る服。 花がなんでそんな服を着ている? タキは胸騒ぎがした。

ともだちにシェアしよう!