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第127話

「なんで花にあんなことを!!アルファを殺すんじゃなかったのか!!」 タキの叫びは痛切だった。 「必要だからだ。これから花は色んなアルファに抱かれる。そういうサービスをつくった。アルファの浮気心はひでぇもんだな。こっそりはじめたサービスなのに、3か月先まで予約でいっぱいだ。なにが番だ。何が運命だ」 少年は皮肉っぽく笑いながら言った。 サービス? 何だそれ、まだ花にそんなことをさせる気か。 タキの顔が怒りで赤黒くなる。 「説明になってない!!」 タキは怒鳴った。 元々自分と同い年のこの少年は苦手だった。 オメガというのに、母親や花とは違いすぎる。 だが、今は憎悪していた。 花に娼婦のような真似をさせている。 「何も聞かないでやさしくしてやれ、お前に出来ることなんかそれだけだし、説明してやることはない」 少年は話を打ち切った。 それで終わりだとわかったから、タキは激高した。 少年に向かってつかみかかる。 タキはベータの中では身体能力はきわめて高い。 やさしげな見た目に関わらず、格闘技の大会で何度も優勝している。 だが。 所詮。 ベータはベータだった。 腕をつかんで止められて、その腕力に動けなくされる。 花もなんなくやってのけたのをタキは見たことがあるが、オメガは飛ぶ鳥や虫を簡単に捕まえる。 スピードや動体視力が桁違いなのだ。 その上、リンゴくだく握力や体重の何倍もあるものを持ち上げる腕力を持っている。 ベータでは、人間ではかなわないものなのだ。 襲いかかったいきおいを瞬間で止められ、床に叩き付けられる。 凄まじい力だった。 見かけでは、タキよりも小さくて少年は華奢なのに。 喉を掴まれ声が出来ない。 息も出来ない 冷たい少年の金色の瞳がタキを見下ろしていた。 「知らないフリをしててやれ。優しくしてやれ。それしか出来ないならそうしてやれ」 でもその声は優しかった。 腹に膝をめり込ませながらだったが。 タキは呻いて胃液を吐いた。 「理解しろとは言わない。だが、俺も花も。終わらせるためだけにやってるんだ」 少年はタキを蹴り上げ、部屋を出ていった。 説明、言い訳さえなかった。 「なんなんだよ・・・なんなんだよ・・・」 タキは泣くだけだった。 何を何を。 少年は考えている? わからなかった。

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