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第128話
「大丈夫か?」
タクが言った。
少年は驚いた。
いつものように泣いて許しを求めても、泣かせて無理やり中に出させたばかりだ。
いつものならグチグチ文句を言うはすで、それをキスで宥めるのが少年の嬉しみなのに。
「なんか。つらいことがあったのか」
指を伸ばしてきたのはタクの方。
そっとやさしく抱きしめられた。
小さな子供を抱きしめるように。
その腕は切ないくらい優しい。
なんでわかるんだ。
そう思う。
少年は自分が何を考えているのかは他人には悟らせない自信がある。
計画していることをかくして、あの黄金を出し抜いて逃げ出した位だ。
だけど、タクにはバレてしまう。
何故?
何故?
この平凡な優しいだけのベータにはバレてしまう。
そして、この優しいだけの男の胸の中では15の子供になってしまう。
声を殺して泣いた。
辛かった。
あんなこと。
あんなこと。
花にさせたかったわけじゃない。
でも、花じゃなければダメだった。
「辛かったんだな」
タクは優しく髪をなでてくれる。
すがりついて泣く。
子どもみたいに泣く。
たまに思う。
犯すようにむさぼるようにタクを欲しがり、セックスしているけれど、オメガにとっては大人しめなセックスでしかないけど、タクへの想いは、
15の少年が初めて恋した相手への、切ない狂おしい想いと変わらないんじゃないかと。
これだけ、ドロドロになるまでやって、タクを泣き叫ばしていてアレだけど。
清らかな初恋?
プラトニック?
黄金が知ったら笑うだろう。
黄金はタクのことは知ってるだろう、当然。
だが、こんな風にタクを犯して、使っているくせに、少年がタクに恋してるなんて知らない。
初めて恋してるなんて知らない。
「泣いとけ」
タクは抱きしめてくれる。
この世界でただ一人、まだ子供だと、少年を扱う男の胸で、少年は声を殺して泣いた。
「おまえが何をしてるのか知らねぇよ。それが正しいのかも分からない。でも、辛いんだったら・・・泣いておけ」
タクの声は優しい。
優しいだけの男は。
本当にどこまでも、優しかった。
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