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第129話
タキが黄金のアルファの番であるオメガの様子を見に行ったのは、決して少年の命令を聞いたからではない。
「見てきてやれ」
白面の屋敷を乗っ取った少年とは当たり前のように一緒に夕食を共にしている。
花は一応都内に住む一家の一人娘という身分を持っているので、放課後あそびに来ても1度は家に帰る。
夜中にタキのベッドに忍び込んではくるが、やはり朝には帰る。
タクさんも、花の家の運転手の仕事がメインというかそれしか出来ないので、夕食時にはほとんどいない。
つまり。
タキが夕食を共にするのは、母親と弟、そして父親をころしてその立場になりかわった少年となのだ。
母親はかなりしっかりしてきた。
記憶は曖昧だし、今自分が置かれている状況も理解出来てないが、タキと弟のトキは認識できていて、とにかく、今は笑顔だ。
母親は少年とも言葉を交わしているが、誰だと思っているのかは良くわからない。
とにかく。
母親は幸せだ。
父親がいないから。
そこに痛みがないわけではない。
タキは父親を愛していたのだから。
だが、タキは母親を救いたかった。
だから後悔はない。
でも、だ。
「オレがお前の命令を聞く必要なんかないだろ」
タキは少年をにらむ。
隣りで弟のトキが不安そうにしていたが、気にしないことにした。
父親が母親を苦しめるていることを理解していた弟のトキは父親が殺されて良かったと思っている。
トキは覚えていないから。
まだ父親があそこまで狂ってしまう前はどれほど子供たちを愛してくれていたか。
トキが覚えている父親は、母親を閉じ込めて虐めて、母親に近づこうとする子供たち達に怒る姿だった。
だからトキは少年が好きだ。
母親を取り戻してくれたから。
トキは母親に甘えっぱなしだ。
やっと取り戻したから。
だから少年をトキは好きで、意外にも少年もトキには優しい。
だからトキは大好きな兄と恩人の少年が揉めるのは辛いのだ。
弟の気持ちは分かるが、タキは少年をゆるせてない。
花にあんな真似をさせている。
そこはどうしても許せない。
花は最近遊びに来ない。
前は毎日タクさんに運転させてきてたのに。
花はそれでもたまに夜中にやってきて、タキを執拗に貪る。
目をさましたら、暗闇の中で花に貫かれ叫ばされている。
電気をつけさせてくれないのは、アルファとの激しい性交跡をみせたくないからだろう。
タキの中を貪る花が。
何も言わない花が。
タキにはつらい。
終わった後抱きしめて、離さないのはタキだ。
でも聞かない。
花が苦しむから。
花を追い詰め てるのは少年だ。
タキは少年の命令なんか金輪際聴く気はなかった。
花の頼みならいざ知らず。
「様子を見てきてやれ」
【 黄金のアルファ】のオメガについて、そう言われた時、ふざけるなとしか思わなかった。
少年もそれ以上は言わなかった。
むしろ優しく2人のやり取りに怯えてたトキを和ませる言葉をかけていた。
自分より大人なのだと思い知らされる。
それもムカついた。
だけど、とにかく、絶対に。
次の日、タキがわざわざ中等部まで黄金のアルファの番のオメガの様子を見に行ったのは。
少年の命令のせいではなかった。
絶対。
絶対。
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