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第139話

その匂いは脳を焼いた。 嗅いだこともない匂い。 鼻から熱い鉄を流し込まれるようだった。 突然、いや、突然だったのか? その匂いはいつからだったのか。 気づいた時には、もうその匂いは白牛の身体の中に吸いこまれ、白牛を焼いていた。 あがっ 白牛は喉を詰まらせた。 ひぐぅ 声がしゃくる。 ヒューヒューと喉が鳴る。 息ができない。 白牛は目を見開いた。 喉を掻きむしる。 ずくん ずくん 何かが脈打った。 「死ね」 声がした。 白牛が尻を犯していたオメガがふりかえりこちらを睨み付けていた。 「死んじまえ」 低い声が誰もいないゴミだらけの砂浜に、奇妙なまでにくっきりと響いた。 その声は闇より深かった。 オメガの長い髪が吹き上がる。 まるでオメガの中から何かが溢れる出すように。 そんな。 こんな、アルファを威圧するような何か。 そんな機能はオメガにはない。 何が起こってる? 「死ねぇ!!」 オメガが吠えた。 匂いが。 焼けた鉄が鼻から口からながれこんで。 その匂いが、今犯しているオメガからだと白牛はやっと知る。 ずくん ずくん また脈打った。 脈打っているのは、オメガの孔にいれたままの陰茎だと白牛は悟った。 でも遅かった。 オメガは淫らに腰を揺らした。 白牛は、詰まったように腫れ上がったままの喉を垂直に立てて、出ることのない悲鳴をあげる。 焼かれ、ねじきられていく。 孔の中で。 搾られ焼かれ、締められ千切られ。 苦痛と快楽の中、巨大な白牛の性器は焼かれ溶かされ、千切られていく。 「頂戴・・・」 艶やかにオメガは言った。 白牛の性器が溶かされ千切れるのと、大量にオメガの中に放つのは同時で。 白牛は砂浜の上に陰茎をちぎられたまま、倒れた。 血を吐く。 目を剥く。 巨大な4つの腕で宙をつかむ。 白牛が考えていたのは自分の番のことだった。 白牛が死んでしまったなら、庇護を失ったオメガはどうなる? 死にたくない。 他のアルファの一時的な慰め者に? 他のアルファがあの愛しいオメガをおもちゃにする? だめだ。 守らないと。 愛してるのだ。 機嫌を直すためなら土下座でもなんでもするし、どんな願いでもききとげる。 浮気はした。 確かにした。 ベータで遊んだし、オメガで楽しんだ。 でも。 番だけは、絶対にそんな目には合わさない、何があっても守りぬく、そう決めていたのだ。 たとえ、黄金からだって、守り抜くつもりだったのに。 死にたくない。 死にたくない。 オレがいないと。 オレのオメガは。 オレが守らないと。 番がいなくなったオメガで楽しんだことがあるからこそ、白牛は番がいないオメガがどうなるかを知っていた。 それだけは。 それだけは。 助けて。 白牛は涙を流して願いながら死んだ。 だれにも頼らないアルファであるはずなのに、わからない何かに願いながら死んだ。 アルファらしくなく、助けを求めて死んだ。 ただ、白牛が望んだ助けは。 番のオメガのためのものだった。 花は喘ぎながら、孔で解け、陰脛骨だけになったアルファの陰茎を孔から掴み取り出した。 そして、それをディルド代わりにして、自分でイった。 アルファを殺して達する絶頂は。 今までのどんなに絶頂よりも。 高くて。深かった。 花は。 変化した。 少年の仮説は本当だった。 花は手に入れた。 アルファ殺しの肉体を。 花は声を上げて、イった。

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