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第142話
現れたのは少年。
オメガだった。
ベータは見分けがつかないだろうが、アルファやオメガならば、オメガを見間違うことはない。
沢山のベータを引き連れ現れた。
ベータ達は武装していた。
そのベータ達は白牛も持っている私兵のように見えた。
アルファ同士のことなら、アルファはベータなど使わないが、ベータ関係のどうでもいい問題はベータにさせる。
アルファなら良くあることだ。
アルファの私兵のベータ達がなぜここに?
しかも、オメガと共に。
もっと分からないのは少年が横抱きにして抱いているのもオメガだ。
髪の長い少女のような姿をしたオメガ。
毛布に包まれ、気絶したように眠っている。
ゆっくりとオメガは身体を起こした。
アルファ絡みだとしても、アルファ当人が来ていないなら、対処するのは問題ない。
アルファがいないのならどんな権利もこいつらにはない。
神経を巡らせる。
白牛がどうなったのかわからないが、まだ分からない内は、子供達に手は出させないし、この屋敷は自分が守る。
オメガはいつでも反撃できるように、でも、そうは見せないよう、ゆったり動いているように見せかけながら、ソファのクッションの隙間を見つからぬように指でさぐる。
銃を隠している。
白牛が死んだ時のため。
白牛は気付きもしてなかっただろうが。
「止めとけ、銃を撃つより先に俺はあんたの首を折る」
ゆっくり少年は抱えていた少女のオメガを床に置きながら言った。
それは事実だろうとオメガは思った。
少年の身体は自分以上に神経が張り巡らされている、と分かったからだ。
場数が違う。
ベータの私兵だけならなんとでも出来るが、このオメガは手強い。
大人しく両手をあげた。
そして、気付く。
床に置かれた少女のようなオメガから、嗅ぎなれた匂いがした。
白牛の。
匂い。
すぐにわかった。
【浮気】相手だ。
まさかオメガを抱いていたとは。
あのデカ牛。
唇をオメガは噛み締めた。
だが、冷静さをすぐに取り戻す。
で、この状況は何だ?
白牛が死んだのなら、何故殺したアルファがここに来ない?
殺したアルファが全てを奪う。
そして、まず殺したアルファのオメガでたのしむはずだ。
アルファはアルファの子供達には優しいから、母親がどうなっているかは気付かせず、寄宿舎に送り込んでくれるだろう。
だが、何故?
何故アルファではなく、オメガがここにいる?
しかも二人。
その上1人は「浮気」相手だ。
少年はソファの前に椅子を引っ張ってきた。
そしてオメガに向かいあって坐る。
話をしたいというのはわかった。
そして言った。
「初めまして。俺が君の新しいアルファ、【白面】だ」
少年はにこやかにほほ笑んだ。
はぁ?
何言ってんだコイツ、オメガは眉を寄せた。
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