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第151話

目覚める前が好き。 番が優しいから。 寝ているとそっと抱き寄せてくれる。 アルファの中のアルファ。 そんなすごい【黄金のアルファ】の番なのだ、自分は、しかも、とても愛してくれているのだすごいことだ。 「可愛い」 そう言ってくれる。 オメガは嬉しくて仕方ない。 目を開けてはだめ。 いつだって番は優しいけれど、目を閉じて眠っている時が一番優しい。 「色は同じでも、違う」 目開けてるとそう番は言う。 オメガの瞳を見ながら。 変なの。 この瞳の色は番によって変えられたモノなのだ。 特殊なコンタクトをはめ込んで、色をわざわざ変えたのだ。 髪だって染めた。 まだ幼い顔を整形さえしたのだ。 この姿を番は好きなのだ。 だから優しいのに。 だから愛してくれているのに。 この目を開けていない時が一番優しい。 だから、胸に優しく抱かれて、まだねむったふりをする。 番が大好き。 あいしてる。 だって番だもの。 「寝たフリか。可愛いな」 笑われる。 その声は優しい。 「目を閉じてそのままにしていろ、代わりにはならなくても、思い出させてくれるから」 番がそう言うから、オメガは従う。 何だって従う。 他のアルファの言う通りにしろと言われてたなら従う。 辛くないかと言われたなら、違うとは言いきれないけど、でも、でも、番は愛してくれていて、その願いを叶えることは愛しているなら当然だと思う。 「 」 誰かの名前を番は読んだ。 アルファとオメガは秘密の名前を持つ。 自分だけが知る本当の名前だ。 アルファが【黄金】や【白面】等の通り名で呼ばれるのは本名を誰も知らないからだ。 【黄金】や【白面】が本名のような扱いになっている。 本当の名前。 それは番だけに教える秘密だ。 もちろんオメガも番に教えたし、番も名前をオメガに教えてくれた。 「 」 番が口にする名前は、オメガの名前ではなかった。 オメガの前の番? それとも前の前の番? そのオメガ達を愛していたのだろう。 今の自分を愛してくれているように。 悲しいんだね、 オメガは自分を抱きしめる番の腕に手を置いた。 慰めたくて。 「可愛いな」 困ったように番が笑った。 可愛いと言われて、オメガは目を閉じたまま笑った。 ゴロゴロと腕の中で動きまわりながら、じゃれつきながら。 「・・・あまりにも愚かすぎて、可愛い」 そう言った番の言葉をオメガは聞きそびれてしまったのだった。 聞いていたなら。 何か結末が変わることがあっただろうか。

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