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第152話

オメガはスキップしながら校舎の外に向かった。 今日もタキが高等部から来てくれる。 小等部から弟もつれて。 ランチを一緒にしてくれるために。 学校を楽しみにしていたのに、誰もランチを一緒にしてくれないのだ。 初日のアレが良くなかったのだとわかっている。 仲良くするのにいいかとおもって、誘われたからしてしまったのが良くなかった。 タキのおかげて誰もが無罪放免になったけれど、学校の生徒達からは距離を取られ、怯えられるようになってしまった。 オメガを犯した二人はオメガを見るたびに震えて、まるでオメガに犯されたみたいになっていて、結局学校をやめてしまった。 結局、友達になんかなれなかった。 オメガは悲しい。 タキのおかげで、友達とはしちゃいけないのは分かった。 でも、長くあこがれていた学校で、こんな風になってしまったのは・・・かなしかった。 でも、タキと弟が毎日のようにランチを一緒にしてくれるのは嬉しい。 校舎の外にあるベンチとテーブルがある場所へ向かう。 ここでランチを食べる生徒は多い。 だが、オメガやタキが使うこのテーブルに座る者はいない。 序列1位のアルファのオメガのランチタイムを妨げる度胸のあるものはいない。 それは寂しいことでもあった。 タキ達が先に来ていた。 「オメガが母親のヤツも多いから、この学校は偏見は少ない方だと思うが、アレはまずかった。とにかくもう二度としないことだ」 凹んでるオメガにタキは容赦なく叱ってくれたのはタキだ。 そこからトモダチになった。 少なくともオメガはそうおもっている。 だから、 タキは自分がつくったランチを分けてくれる。 友だちが出来なくて落ち込むオメガを元気づけてくれる。 タキとランチをする日は、オメガは自分のランチは持ってこない タキが用意してくれる。 タキが有名女子校の中等部の女子学生と付き合っているのは有名だ。 毎朝学校まで、家の車で彼女を送り届けているのも。 その時に、彼女に毎朝自分で作っているランチを渡しているのも。 タキはその女学生に惚れきっているのだ。 オメガとタキの弟は、彼女のためにつくったランチのおこぼれに預かっているのだ。 オメガにしてみれば何でもいい。 タキのランチは美味しい。 そしてタキとランチをするのは楽しい。 今日はフワフワの卵焼きとベーコンとトマトを挟んだサンドイッチだった。 デザートにちいさなカップケーキまでついてる。 タキの恋人への愛が深い。 「あ、こら、ちゃんと座ってからだろ」 ランチボックスをもらってすぐあけて、座る前に食べ始めたのでタキに怒られる。 確かにセンターにいたころは、そんなことを言われていたけど、番はそんなことで文句を言わない。 何でも好きにさせてくれる。 かぶりついてたら、ケチャップが口の端から垂れて、タキに眉をひそめられる。 イライラと、紙ナプキンで拭かれ、怒られる。 「お行儀良く食べろ!!」 タキに怒られたので素直に従う。 「獣みたいなヤツだな、トキが真似するからちゃんとしろ!!」 タキはすぐ怒る。 怒らなければもっと好きなのに、でも、怒ってくれるのはタキだけだから。 「オレは真似なんかしない。母さんがお行儀良くね、って言ったから」 弟のトキが反論する。 トキはオメガの母親を崇拝している。 タキとトキの母親は一時おかしくなっていたが、今はかなり調子が良くなっているらしい。 タキ達の父親白面が、やっとオメガ以外にも興味をもって再進撃を始めたからだろうと噂されている。 タキ達の父親は、オメガの番、黄金のアルファに次ぐ序列2位のアルファ、白面のアルファなのだ。 まあ、番と父親は敵同士とも言える。 だが。 アルファ同士のことはベータやオメガが口出すこと、ではない。 その結果は確実に降り掛かってくるとしても。 とにかく、オメガはタキが自分のことを気にかけてくれているのは嬉しかった。

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