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第153話

タキとトキの兄弟がそれぞれの校舎へ帰っていくのをオメガは手をふって見送った。 また一人ぼっちだ。 それでも。 同じ年頃のベータ達と授業を受けるのは楽しかった。 全部知ってることだとしても。 オメガはセンターを出る時には、大学を卒業している位の知識は得ているものなのだ。 オメガはベータ達があまりかしこくないところもふくめて好きだった。 ベータに生まれていたらきっと楽しかったんだろうな、とはおもう。 もちろん、今も幸せだ。 素晴らしい番に愛されているのだから。 だけど、ベータ達が愉しそうで。 それはアルファの支配の下で生かされているからだし、そのアルファを支えるオメガであることにもちろん誇りを持っているけど。 授業がはじまるからあわてて、バスケをやめて走ってくる少年達の仲間に入りたいとは思ってしまうのだ。 でも。 無理。 能力が違いすぎるから、バスケは出来ないし、友達をつくるのも難しい。 諦めてないけど。 「友達ができるといいな」 そう番も言ってくれている。 オメガがベータを羨ましがることを、番は面白がっている。 だから、学校にも行かせてくれた。 オメガがベータになれるわけがない。 ベータがアルファに、オメガがアルファになれないのと同じで。 それでも。 ベータ達をしりたいと、オメガは思ったのだった。 それを理解して許してくれるアルファが番だなんて自分はなんて幸福なんだと、幸せをかみしめる。 そして、教室に戻ろうとした。 本当は生徒はエレベーターを使ってはいけない。 でも、ちょっといいかな、と思った。 誰も見てない。 センターにいたころ、オメガの子供達はエレベーターに夢中になった。 遊び道具にしてはいけない、そう言われていたが、皆で教官やマザーと呼ばれる世話係の目を盗んでセンターのエレベーターに乗ったものだ。 閉じ込められた子供たちにとって、エレベーターは最高の娯楽だった。 なので、いけないとは思いながら、エレベーターに乗った。 ドアの閉鎖ボタンを押して閉めようとした時、誰かが滑り込んできた。 怒られる、そう思った。 乗ってくるのは先生に決まってる。 職員しかエレベーターには乗ってはいけいないのだ。 「ごめんなさい、ごめんなさい」 謝ろうとした。 ドアが閉まる。 おずおずと顔を上げた。 そこにいたのは。 確かにこの学園の制服を着ていたけれど、この学園の生徒ではなかった。 オメガの頭にはもう、生徒全員の名前が入ってる。 高等部までの全員の名前と顔が。 その誰でもないから生徒ではない。 でも。 そんなことより。 オメガは目を見張る。 不機嫌この上ない顔をして、舌打ちしながらこちらを見下ろす、そう、タキと同じ年頃、自分より3つ位は年上だろうその少年は。 金色の目。 明るい茶色の髪。 自分の顔にあまりにも似ていた。 もっと驚くべきことは。 この少年もオメガだった。 自分によく似た、自分と同じオメガに学校で出逢うなんて、どういうこと? 「良く似てやがる。気色悪いぜ。悪趣味この上ねーなあの野郎」 少年はオメガを見ながら悪態をついた。 エレベーターは動き出した。 が、途中で止まった。 すぐにわかった。 閉じめられたのだと。 この少年に。 オメガは後ずさる。 「タキの話じゃ、随分頭の中がお花畑なガキだみたいだが、馬鹿ではないようだな」 ニヤニヤ少年が笑う。 タキの知り合い? 何故タキがオメガを知ってる? オメガは基本的に番の前には姿を出さない。 いくらアルファとでも渡りあえるとはいえ、タキが知るオメガなど、母親と・・・この学校に通うボクくらいなはず、と思う。 オメガは自分が特殊であることは知ってる。 学校に通うオメガなど他にはいないことを。 「まあ、仲良くしよーぜ。とりあえずはな」 少年が美しい唇を吊り上げて笑った。 自分と似た顔がここまで美しく凶悪になるのだとオメガは初めて知った。

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