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第156話

風船のように顔を泣き腫らしてオメガは首都にある屋敷に帰ってきた。 タキの家の車に送られて。 タキはオメガにとても優しかった。 あの嫌なヤツとは違う。 嫌いだ。 大嫌い。 オメガはそうおもう。 番は屋敷にいた。 帰って来たと知って、書斎から居間まで降りてきてくれた。 いつだってそう。 ちゃんと迎えてくれる。 「スゴい顔だな、どうした?」 優しい声で尋ねられる。 番は優しい。 いつだって優しい。 嫁いできたその日からずっと聴いてくれる。 「大丈夫か?」と。 慣れない発情に怯えて泣いていたオメガにやさしく声をかけてから、抱いてくれたのだ。 酷くされても、死ぬことはそんなにはない、オメガは丈夫だから、と教えられてきたのに。 本当に飢えたアルファがどんなに苛烈にオメガを食らうかは、他のアルファに抱かれた時に教えこまれた。 そして、確かにオメガは丈夫で。 そんなものでも感じることも。 でも、番との時にはそんなのはなかった。 初めての夜言ってくれた愛してる、も覚えている。 身体を 怯えが快楽に変わり、 恥じらいが無くなるまで愛してくれた。 自分で腰をふりおどれるようになるまで、感じることを教えられた。 尻を振り淫らに自分でイケるようになることを。 そして、大きなソレで貫かれることの良さを。 初めての夜から強請った。 いわされた。 ソレが欲しい、挿れて欲しいと。 真っ青な黄金の単眼を夢見るように見つめてきた。 なぜ嫁ぐ前に髪や目の色を変えられたのか、なぜ顔まで変えなければならなかったのか、聞きそびれた。 「気持ちいい、気持ちいい」 泣きながらくりかえしても、 「それ、好・・き、好き、好き・・ぃ」 行き絶え絶えになってくりかえし、胸を噛まれて達しても、 「いっぱいいっぱい出してぇ」 腹の奥で出してもらいたくて叫んでも 番はただ笑って 「可愛いな」そう言って、なんでもそうしてくれた。 「 どうした?何かされたのか?」 パンパンに腫れた顔のオメガを番は抱きしめてくれる。 優しく聞いてくれる。 「誰かがお前を侮辱したのか?ならば殺してやろう」 番は本当に優しい。 「色んな欲望を知って欲しいからだ。お前がもっと可愛くなるように」 そう言って、色んなアルファやベータに抱かせた。 嫌だった。 嫌だと言った。 でも。 番が望むから。 そして、始まってしまえば感じるから。 誰かに抱かれるとさらに番が優しいから。 酷く責めてオメガが感じることは許しても、オメガへの侮蔑は赦さない。 「淫乱」や「ビッチ」という言葉は侮蔑には入らないという独自基準も黄金にあったけれど。 侮蔑したアルファやベータを番は殺してみせた。 自分のオメガを侮辱するのは許さないと。 首をちぎってオメガに捧げてくれた。 だから。 だから。 愛されてる。 愛されてるんだ。 腫れて塞がった目からまた涙が出た。 「アイツがオレを侮辱した。オレは自分の代わりだと。そう言ってオレを酷く犯した」 言いつけた。 きっとあの嫌なヤツを殺してくれる。 そう思って。 そうでなければ。 そうあってくれなければ。 「代わり?」 そう言って眉をひそめてから番は、腑に落ちたようにニッコリと笑った。 「ああ、あの子に会ったのか」 美しい微笑を浮かべたまま、番が優しい声で言う。 「なら、あの子に抱かれたか?」 番の単眼が見たこともないほど、深く青く光る。 番の金色の指が、シャツのボタンを外していく。 ボタンをはずして、めくったシャツの下にある、吸われて腫れた乳首を見て、目を細めた。 それは嬉しそうで。 そして、飢えていた。 そんなに。 そんなに。 ギラついた目で見られたことはなかった。 いつでも番は優しかったから。 飢えたように、胸の尖りに齧りつかれた。 音を立てて吸われた。 いつものおいつめるような愛し方ではなかった。 もっと違う、食い破るような、貪り方だった。 誰かに抱かれた後のオメガが一番かわいいと、誰かに抱かれた後は絶対に抱かれたけれども。 でも、こんな風にじゃない。 「あの子も舐めたんだな、ここを。あの子の舌が」 番は何日何日も飢えた者が、ハチミツを与えられ たかのように、オメガの乳首を舐め、味わい、吸っていた。 「ああっ・・・ダメぇ・・.ああっ」 オメガは簡単に感じてしまう。 嫌だった。 ほかのアルファ達とするのを嫌だと思ったことはある。 でも、番とするのを嫌だなんて思ったことはないのに。 「嫌ァ!!」 泣いてそう言ったのに、止めてくれない。 他のアルファの時には厳しいけれど、2人だけの夜なら嫌がったならやめるはず・・・ いや、嫌がったことなんかなかった。 番のすることを嫌がったことなんて。 でも。 「あの子の味がする」 ウットリと番は言って微笑んで。 あの少年がつけた乳首の周りの歯型を舌で何度も何度もなぞり始めた。 少年の舌をそこで味わうように、また乳首を齧られ、吸われ、舐められた。 「美味しい」 番はわらったのだ。 今までで1番幸せそうな顔で。 だから。 だから。 「愛してるよ」 番がそう言った言葉が誰に向けられているかくらい。 オメガにもわかった。

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