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第158話

「 帰ってくると思っていたよ」 もう動かなくなったオメガに腰をぶつけるながら黄金のアルファは呟いた。 この子をあの子が使ったとおもうだけで、この孔が堪らない ああ、愛しい。 初めて愛した人とはちがった意味で愛してる。 おまえだけだ。 私の望みをかなえてくれるのは。 他の誰でもない。 何を考えてこの子を犯した? それを思うだけで堪らない。 お前だけだ。 この世界で私と同じ結論に到れるのは。 お前だけだ。 そういう意味で愛してる。 それにお前は孔の具合も愛しい人によく似てた。 顔や姿や髪や目の色々だけでなく。 今使っている、この子の孔とは違って。 だれも、あいした人の代わりにはならない。 でも、お前を愛してる。 お前でなければならなかった。 お前は私から愛しい人を奪った。 恨みはしない。 愛しい人がオメガで私がアルファだったからだ。 医者たちは愛しい人よりお前をたすけた。 生まれるお前がオメガだったからだ。 死にかけていて、助かってももう子供を生むことができないあの人より、アルファの子どもを生めるお前が価値があるとされたからだ。 1人でも多くのアルファの子供が必要だから。 この世界にアルファが生まれていくために。 アルファの子供はベータが多いが、そのベータから、アルファが生まれる確率は高い。 だから、アルファの子供たちが必要なのだ。 オメガだから死んだ。 愛しい人は。 私がアルファでアルファの子供が、しかもオメガであるお前が腹にいたから死んだ。 下らない。 本当に下らない。 何もかもが下らない。 なんのために生きている。 アルファが支配する世界。 ベータ達は殺され弄ばれても、幸せな世界のためには それを仕方ないとして、アルファを崇め奉り、仲間たちを捧げ続ける。 殺されるのが自分じゃないかぎり、支配者に喜んで支配される憐れな奴隷。 オメガはオメガで自分達をアルファに捧げてる。 番なんて絆だけのために。 アルファに使われるだけの人生を、諦めて送っている。 高い能力を持ちながら、飼われて死ぬ。 諦めることを幸せにして。 アルファは? アルファは? 高い能力の全てを権力ゲームと戦いと快楽のためだけに使う。 どれだけ自分が他より強いのかを証明するだけのためだけに生きている 下らない。 本当にくだらない 本当にくだらない。 そんなくだらない世界だから。 愛する人は死んだのだ。 番? くだらない。 アルファとオメガの愛? くだらない。 ならばもう。 終わらせてしまおう。 全てを。 お前は私とおなじものを見ているのだろう。 それがうれしい。 あの子を思って、オメガの中に出した。 意識は失っていても、ちゃんと身体は反応し、孔が締付けてきた。 これをあの子も味わったのだろうか。 「終わらせるんだ。私達で」 黄金はあの子に向かってささやいた。 オメガを犯したのはあの子からのメッセージ。 だから、きっと届いている。 この言葉も。 「終わらせるんだ」 黄金の声はどこまでも優しかった。

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