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第162話

「お兄さん!!」 花が叫び、ナイフを投げる。 そこからが、また再開の合図だ。 青が首の血管を狙って黄金へと跳んで 来る。 刀が煌めく。 少年は2人の動きを予測し、さらに、黄金の動きを予測する。 オメガはアルファに応えることができる。 アルファの過酷な責めに耐えられるのは、それを身体が予測出来るからだ。 ただ頑丈なだけじゃない。 アルファと交合するために、呼吸を読み感じ、アルファに合わせているのだ。 それを今、戦いに少年達は応用していた。 確かにアルファは恐ろしい。 だが、見切れるならば、3人のオメガの最大限の力を使うのならば。 黄金は手のひらでナイフを跳ね返し、刀を腕で受け止めた。 皮膚から血がでることもない。 アルファの肌は銃すらはね返す。 数カ所ある、弱い皮膚を、呼吸の隙間で切るしかない。 少年は斬った。 首を。 切れた。 だが浅い。 でも、黄金は血を流していた。 でも。 届いた。 オメガの。 オメガの攻撃が、アルファに。 「いけるぞ!!!」 少年は叫んだ。 高揚した。 初めてアルファを殺した時よりも高い高揚だった。 殺すためには犯されなければならなかった。 それと引き換えでなければならなかった。 オメガの何もかもが、性と欲に結びつけられなければならなかった。 これは違う これは違う。 黄金という自分に効くフェロモンを出す番さえいなくなれば、少年はもう、その身体を淫らに使うことなく、アルファを殺せることになる。 オメガ達が力を合わせれば。 アルファと闘えるのだ。 アルファのモノにならなくてもいい未来がある。 アルファにはオメガが必要だが、オメガにはアルファが必要なわけではない。 子供を得るため、とか、セックスの良さとか、そういうものはあったとしても、絶対に必要なものではない。 絶対に必要としているのはアルファの方なのだ。 少年はアルファがいなければオメガが子供が出来ないということも疑っている。 擬似性器と言われるオメガの男性器は本当に擬似性器なのか。 だれもまだ、実験していないのだ。 この世界が始まっていらい、まだ、誰も。 番を得ていないオメガ同士で、子供が出来るかどうかを。 オメガがアルファの進化したものなら。 オメガがオメガを妊娠させることも有り得るのでは? 「お前達がいらねぇんだよ、アルファ!!お前達がな!!」 少年は叫び、攻撃する。 ああ、オメガにも集団の意志があるとわかる。 つながっていた。 それは黄金とも繋がることでもあったけれども。 オメガ達は攻撃の連携を繋がった意識の中で教え合う。 それは黄金にも繋がっている、だが黄金は1人だ。 3人の意志を1人では追い切れない。 綻びがでる。 オメガ達の攻撃は休むことがない。 体力ではアルファよりも上だ。 黄金は避けることに専念してしまっている。 花のナイフが腕の付け根を掠める。 致命傷ではない。 だが血がでた。 首から、腕の付け根から黄金血を流す。 オメガがアルファを押している。 押しているんだ。 イける。 そうオメガ達は思った。

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