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第163話

繋がった意識の中で、黄金のアルファの先を少年は読む。 花や青の攻撃も同期し読み取りながら。 圧倒的な駒の量で勝負するチェスのよう。 駒の少ない黄金は哀れな程だ。 少年が行き 花が投げ 青が斬る 隙間隙間隙間 順番方向タイミング すべてを切り替えて絶え間なく。 オメガはアルファより長く息がつづくのだから。 押していた。 確実に押していた。 その首の血管を切り裂ける、そう思った時だった。 少年の頭に鮮烈な映像が浮かんできた。 まだ幼い。 嫌がって逃げる身体を押さえつけられ、孔を犯される自分の姿だった。 思わず身体が強ばった。 あれは。 あれは。 敗北の記憶だった。 発情はしていても、拒否をした。 アルファの慰みものものなど嫌だったから。 幼い少年は、孔をひくつかせ、濡らしながら、それでも嫌だとさけんだ。 モノになんてなりたくなかった。 なかったのに。 これが好きになる。 黄金のアルファはそう言って、その巨大な陰茎を少年にねじ込んだのだ。 少年は喚いた。 良すぎたからだ。 熱くて大きくて、硬くて。 気持ち良かった。 腰を振った最初から。 泣いていた。 泣いていた。 あれは。 敗北の記憶だった。 快楽と屈辱の。 モノだと教えこまれた夜の。 少年は攻撃が出来なかった。 思わず、力が逸れたのだ。 黄金はそれを見逃さなかった。 少年に掴みかかる。 「お兄さん!!」 助けようとナイフを手にして飛びかかろうとした花は空中で凍り付く。 大人しく言いなりになれ、と言い含められ、千里眼のアルファに胸を舐められ、孔を弄られる自分が見えたからだ。 あの日。 花はモノにされた。 道具にされた。 花は思わずナイフを取り落としてしまった。 黄金の首に刀を突き立てようとしていた青も手が震えた。 選ばなければならなかった夜。 誰を選んだら1番マシなのか。 マシな奴隷として生きれる選択肢を捜したあの夜。 そして、白牛に身を任せた。 まだいいかと思っただけで。 それはモノになった夜だった。 青の攻撃は黄金からそれた。 少年は黄金に組み敷かれた。 初めての夜のように。 「可愛いな、お前は」 黄金は心から言った。 黄金が繋がった意識からオメガ達の記憶を操作したのだとわかった。 黄金は共通意識についてはオメガ達より知り尽くしていた。 意識が繋がっているのならこんなことも可能なのだ。 花と青は、記憶を何度も繰り返させられ、うずくまっている。 花が声を出して嗚咽している。 青が胸を抑えて呻いている。 「お前の辿り着いた先は私と同じだな。そう、オメガはアルファと同じモノだし、第一位のアルファはアルファ全体の意識を操れる。だからこんなふうに、記憶を呼び起こすくらいはできる。でも、まだ完璧じゃないんだよ。だからおまえか必要だった。愛しい愛しいお前が」 黄金は愛おしそうに言った。 少年は記憶の中で何度も犯されながら、その声をとおく聞いていた。

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