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第164話

教えこまれた記憶が少年を苛む。 幼い身体の奥深くへと咥えこまされ、欲しくもない快楽を焼き付けられ、屈辱に泣く。 「毎日。毎日。私が望めばお前はここで私を受けいれるんだ。ああ、いい。お前は。母親に似ている。ここの具合まで。代わりにはならないが」 囁かれたのは最初の夜。 母親? 少年はよだれを垂らし、喘ぎながら目を見開く。 母親など知らない。 オメガには親はいない。 そういう風に育てられる。 アルファが最初の家族になるように。 アルファだけになるように。 「お前の母親は私の番だったんだよ。お前の穴の形も具合いも本当に母親に似てる」 黄金はその具合いを確かめるように、念入りに孔を擦り上げていく。 ある場所を執拗に突かれて、少年はヒィヒィと泣き叫ぶ。 それは何もかも、捨ててしまいたくなるほど気持ち良かった。 「母親と同じだ。ここが好きだな」 黄金の声はどこまでもやさしかった。 母親。 番。 少年は、家族を持たないオメガだ。 それほど血縁がオメガとアルファの間では重視されていないことは知っている。 だが。 だが。 自分を犯しているのは父親で、自分を犯している理由か母親の子供であることはわかった。 それは。 それは。 「気持ちわりぃよ、お前、気色悪いよ、お前!!」 少年はゾっとしながら叫んだ。 選んだオメガが自分の子供であると知らないままですごすアルファはいるだろう。 オメガが誰から生まれたかなんか気にしてないし、調べもしない。 番を失ったオメガが若いアルファに犯されることもあるだろう。 その子が自分の子だなんて知ることもない。 アルファもオメガも父親からも母親からも切り離されたものであるという考えかたが徹底しているのだ。 なのに黄金は。 母親からオメガを選んだのだ。 それはアルファではありえない奇怪で醜悪な行為だった。 「私はお前の父親、になるのかな?」 変わらなく優しい笑みのまま、黄金は我が子の奥を拓いていく。 ゔぉぉぉ 獣のように少年は吠えた。 そして、少年は白濁を吹きあがらせた。 「いやだぁ・・・お前は嫌だぁ!!たすけてぇ、 助けよう・・・」 泣いて頼んだ。 黄金にではない。 コイツに頼むなんてありえなかった。 誰かに。 誰でもいい、コイツから俺を解放して。 だが、誰の救いもなかった。 「ああ、可愛い、愛してるよ」 その言葉に全身から鳥肌がたった。 それでも突き上げる度に、熱した血液が流れるような快楽があり、それが更に少年を苦しめた。 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ 助けて助けて助けて助けて 気持ちいい気色悪い死ね殺す死ね殺す もっともっとああ、堪らない 嫌だ嫌だ嫌だ 助けなどない日々の始まりだった 黄金だけじゃない、いろんなアルファやベータに犯された。 願っても願っても。 助けはこなかった。 こなかった。 こなかった。 だからだからだからだから。 少年は手にした刃物で切り裂いた。 過去を。 そして今、自分にのしかかってこようとする黄金の首筋を。 真っ赤な血が飛び散り、 惨めな過去を赤く塗りかえていく。 そう。 誰も何も助けてくれなかったから、少年は自分で自分の未来を変えたのだ。 俺を助けるのはこの俺だ。 そして、アルファは全員殺す!! そう決めたのだ。 赤い血が飛び散ると同時に、過去の記憶は霧散していく。 「記憶をみせたって無駄だぜ、俺は、いや、俺達は過去を叩き潰して、お前らを叩き潰すためにここにいるんだからな!!」 少年は黄金の血を浴びながらさけんだ。 父親の血は望んだとおり、甘かった。 この世界に復讐ほど甘いものはない。

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