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第167話
黄金は捕まえていた青の首を捻り切ろうとして、できなかった。
身体が硬直していた。
違う。
身体が欲しがっていた。
今掴んでるオメガなどいらないと。
向こうに立っている、あのオメガが喰いたいと。
いつからだろう。
少年のフェロモンが流れてきていた。
それに反応してしまっていた。
ただの発情じゃない。
番のフェロモンで脳が焼かれて。
ああ、今日は抑制剤を打っていない。
そう、オメガの抑制剤を自分に打って効いたことが、オメガとアルファは同じなのではという疑問のきっかけだった。
だがおかしい。
発情するだけなら、こんなに身体が重くならない。
身体がおかしい。
脳が喉が本当に焼かれているような。
耐え難い欲望と、苦しさは同時に襲ってきた。
「俺のフェロモンは効いてきたか?まあ、こっちもたまんねぇけどな。そろそろ時間だ予定通りだ」
喘ぎながら少年は言う。
少年も苦しそうだ。
番が欲しくてたまらないのだ。
乳首が尖り、勃起しているのがわかった。
孔もぐっしょり濡れているはずだ。
少年も。
黄金も、
互いのフェロモンに反応していた。
番がもうこの世にはいない 花と青は、黄金のフェロモンの影響をうけない。
黄金の手から逃れた青があわてて飛び退く。
花も2人をみまもる。
「花を抱いてお前のフェロモンに反応しないようにはできるんだが、効果は一時的なんだよな。時間が経てばこのとおりだ。俺は今てめぇのチンポが欲しくてたまんねぇ。でも、な、これでいい。準備はOKだ。動けねぇだろ、てめぇは」
少年は息を荒げ、苦しげにでも、笑った。
黄金は息ができない。
胸が苦しい。
「花からとったアルファ殺しの毒だよ。時間がかかるんだ。直接お前に摂取させてないから。お前と花がヤれば確実におまえを殺せるんだが、お前さすがに花を抱いたりしないだろ?花が毒をだしたらすぐに匂いてわかるしな。セックス以外で摂取させれるかの実験を色々してみたんだ。それで色んなことがわかった。この毒はオメガには効かないこととかもね。排出される。体液から。それが分かったから」
だから、と少年は笑った。
「お前のオメガに毎日毒を飲んで貰っていた。そして、番のフェロモンでコーティングした毒をお前は毎日貪っていたんだよ。舐めて吸って孔で楽しんで、お前は舌や粘膜から毒を吸収してた。でもそれだけじゃ死なない。致死量には足りない。それに毒殺じゃダメだ。直接俺が殺さないと、俺が1位にはなれねぇ」
少年は近くまで来た花を抱きしめた。
発情した身体を花に擦り付け、見せつけるように腰を振る。
淫らなダンスのように。
花は無邪気に喘ぐ。
黄金は気づく。
番のフェロモンに気をとられて、そちらに夢中にな っていたが、少年が抱きしめているオメガから、危険な匂いがしていた。
アルファは番のフェロモンを最優先で感知してしまう。
だから、この匂いに気付かなかった。
これが。
毒なのだ
アルファ殺しの。
少年の毒は黄金には効かない。
だが。他のオメガが作り出した毒は効く。
「花はお前が青を捕まえた辺りからずっと毒を出していた。そして、俺もフェロモンを出していたんだよ。俺のフェロモンで花の毒をコーティングしていたんだ。普通なら花を抱かなきゃ、お前には毒が効かない。花は俺ほど毒を出せないからな。でも毎日毎日毒を蓄積させていたお前の致死量に達するにはこれでも十分効いた」
少年は笑った。
予定通りだったから。
花の毒を黄金の番を通して毎日蓄積させ、気を反らせている間に自分のフェロモンでごました花の毒で殺す。
最初から少年は。
まともに黄金とやり合うつもりなどなかったのだ。
少年は花にキスをした。
花がいなければ。
ダメだった
花の毒。
そして、黄金の番であるあのオメガがいなければ。
青が捕まったきっかけで黄金に話をさせたのも、予定通りの時間稼ぎだった。
「アルファ相手に最初からやり合うつもりはねーよ。毒が効く時間を稼ぐためにお前に話をさせていただけだ」
少年は嬉しかった。
「なんで自分は操られていなんて思えるんだ?操られていたのはな、お前の方だよ」
これが言えるからだ。
黄金は喉を押さえて血を吐いた。
毒はもう。
しっかりと回っていた。
「勝つのはいつだって、この俺なんだよ」
少年は言い切ったのだった。
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