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第168話

少年は小さな刃物を持って黄金に近づいた。 ピンポイントで血管を斬るのなら、この大きさで十分なのだ。 黄金は跪いたまま、少年を見上げた。 少年は美しい。 とても美しい。 熱っぽい金の瞳。 濡れた唇。 尖った乳首は熟れていて。 その身体は甘く香った。 少年も黄金を見つめる 金の肌。 青い単眼。 赤い髪。 美しい。 そう少年も思ったのだ。 初めて黄金を見た時にも、なんて美しい、と思ったのだった。 それは本当にだった。 2人は。 発情していた。 2人は番だった。 「 」 黄金が名前を呼んだ。 番だけが呼べる名前だ。 アルファもオメガも、番だけにしか名前を教えない。 「 」 少年も黄金の名前を呼んだ。 本当の名前を。 「てめぇを今すぐ殺してもいい。死んだ後にそのチンポを使うのも悪くねぇ。でも、今からてめぇを犯す」 少年はそう言った。 その声は。 言葉ほど強くはなかった。 黄金はもう、座っているだけで精一杯だった。 少年が強く肩を押すと背中から倒れた。 少年は笑った。 でも、いつもよりは。 切ない、泣く前に笑おうとする子供のような笑顔だった。 「そんなに好きだったか?俺の母親が」 少年は言ったズボンを下ろしながら。 孔はもう濡れていたし、疑似性器はガチガチで、さきか滴っていた。 迷うことなく慣れた手つきで少年は黄金のズボンをずらし、巨大な陰茎をそこから出した。 それも。 そそり立っていた。 少年を欲しがって。 「世界を滅ぼしても、まだ足りないくらいに愛してる」 黄金は言った。 それは 少年にではなかった。 「そっか」 頷いた。 少年は、ゆっくりと巨大な黄金の陰茎へと腰を下ろしていく。 その孔で、黄金のそれを迎えいれていた。 熱くて巨大なそれは。 ずっとずっと堪らなくほしくて、それを認めることはできなかったモノだった。 少年はそれを孔で味わった。 その熱さを今本当に味わっていた。 拒否しないで、それを楽しめたのは、今が初めてだった。 1度だって。 望んで黄金に抱かれたことはなかったから。 腰を淫らに振り、腰を上げ下ろし、少年は心ゆくまでそれを味わった。 「いいっ、たまんねぇ・・・」 それを認めてするセックスは、こんなにも良かった。 いつも殺しながらアルファを貪った。 それはそれで楽しい。 いつかコイツを殺しながらするセックスが楽しみで仕方なかった。 こいつを殺しながらするセックスを思って、アルファが息絶える前に達したのだった。 黄金を殺すことを考えるだけで濡れたのに。 いざ実際してみると、想像していたような、犯して奪うよな、嬲るようなものではなかった。 サディスティックな高揚はなく、ただ自分を欲しがる身体と、欲しがっている自分の身体があった。 「気持ちいい・・・」 死んで行くアルファの身体は気持ち良かった。 熱く脈打つそこを身体の奥までくわえこんだ。 望んでそうしたのははじめてで、それは自分のためのものだと分かって、締め付け絞り上げ、欲しがっていた。 「気持ち、いい」 少年は泣いていた。 自分でもそれがなぜなのか分からないまま。 黄金はもう毒で身動きできない。 でも、黄金はその精を最後に少年の中に注ぎこんだ。 少年は身体を反らしそれを1滴残らず絞り込むように受け止めた。 高い声が。 荒野に響いた。 少年をつらぬき、甘く焼いた。 「 」 黄金が最期に呼んだ名前は。 少年の名前だった。 愛した人の名前ではなく。 「 」 少年もその名前を呼んだ。 番だけが呼べる名前を。 少年のナイフが喉の血管を切り裂き、血が吹き上がり、黄金が死に至るまで数秒しかかからなかっただろう。 「愛する人の所へ行けると思ってるのか?馬鹿だな」 少年は黄金の血に塗れたまま、まだ硬度を失わない黄金の陰茎を孔に挿れたまま、言った。 腰を揺らし回して、まだ楽しんでいた。 暖かい血で濡れたまま。 「あんたのオメガは先に行ってあんたを待ってる。母さんの所へなんか行かせてくれないよ、殺してでもあんたを自分のモノにしようとしたんだぜ」 少年は言った。 「あの人はオレのだ」 頭の軽いオメガだと思っていた黄金の番は、誰よりもオメガらしくないオメガだったのだ。 モノとして使われていたことを全く気にしていなかった。 あのオメガには。 最初からそんなことはどうでも良かったのだ。 「これで、オレだけのモノになる」 そう言って黄金に毒を盛ることに協力したのだ。 まあ、それを示したのは少年だったのだが。 「誰にも渡さない」 あのオメガが望んだのは、自分が盛った毒で黄金が死ぬことだけだった。 死んだ黄金を追いかけて、つきまとって離れないつもりだ。 黄金は愛しい人の元へなど、行かせてはもらえないだろう。 あのオメガはオメガのように黄金を愛していたのではなく、そう、アルファのように黄金を愛していたのだ。 手放すつもりなどない、所有するモノとして。 黄金は便利なモノだとしか思っていなかっただろうが。 悪霊のようにとりつき、決して黄金から離れない。 あれは、そういうモノだったのだ。 この戦いが始まる前に、あのオメガは死んでいる。 黄金を迎えにいくために。 だから。 黄金を迎えにくるのは、黄金の愛しい人ではなく、あの悪霊のようなオメガだろう。 少年はおかしくなって笑った。 そして、泣いた。 今犯して殺した男は。 自分によく似ていた。 人を操り狡猾で。 人を嵌めるのが何よりも得意。 誰よりも。 自分に似ていた。 自分の愛のためなら、世界を滅ぼすことを簡単に臨むほど。 愛などはない。 このアルファに与える感情などない。 でも。 涙は止まらなかった。 「俺の勝ちだ」 少年はそれだけを言って、死んだアルファの身体で、もう一度イった。 まだ。 殺した男の身体は暖かだった。

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