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第6話
「この部屋は、私の寝室です。
この環境に慣れて頂く為にも数日間は、この部屋で過ごして頂きます。
あ、それと……」
取り引きに同意した後、部屋の説明をしてくれていた昴が何かを思い出したように千月を見た。
「そのプロテクターなんですが、ここで生活して頂くにあたって、ひと月の間身に着けていて下さい。」
自分の首を指差し千月の首に着けられたプロテクターの存在を伝えた。
「は?…いつの間にこんなの着けたんだよ。」
オメガの機能が発達していない千月には、必要ない物だとプロテクターの存在は知っていたが、今まで着けたことがなかった。
まるで首輪を着けられた飼い犬のような気分だ。
「そのプロテクターの造りは特殊で、私の指紋認証でしか解除できません。
この家には、私以外にもアルファの人間が出入りします。
…万が一があっては困りますから、ひと月の間は着けていてくださいね。」
語尾を強調させ有無を言わさない態度をとった昴に千月は黙るしかない。
「栖川、千月さんの足枷の鎖を伸ばしてやりなさい。」
「畏まりました。」
ベッドに取り付けられていた足枷の鎖をジャラジャラと伸ばした栖川は、一礼して昴の車椅子を押し部屋から出て行った。
もちろん鍵を厳重にかけて。
――
ワインレッドの絨毯が敷き詰められた気品溢れる廊下を栖川に車椅子を押され進む。
「…昴様、失礼ながら申し上げさせて頂きますが…。
本当に小南様と過ごすのは、ひと月の間だけで宜しいのですか?」
「あぁ、ひと月だけで構わない。」
「…ですが。以前昴様は、運命の人である小南様を傷付けられるのを見てられないと仰っていましたので…。
取り引きが終了してしまうと…またあの様な方々に危害を加えられる恐れがあります。」
「…栖川。千月さんも急にこんな窮屈な場所に連れて来られて、手放しに喜べる状況ではないでしょう。
ひと月の間に気が変わって下さるに越したことはないですが…。
きっとあの方は、失って見ないと気づけない…。」
栖川の言った通り…。
千月さんが、他の男に暴力を振られているのに何もしてやれない自分が憎い。
こんな体になった今、運命の相手である千月さんを守れない自分が情けない。
だからこそ、ひと月だけ愛しい彼を守りたいと思った。
きっとそんな事は、彼自身望んではいないだろうが…。
それにあわよくば…自分だけのオメガになれば良いなんて思っているんだ。
だけど……彼、千月さんは、振り向いてすらくれないだろう…。
彼を手に入れる方法は幾らでもある。
まだ始まったばかりだ。
「……あなたは、酷な人ですね。」
ボソリと呟いた栖川に口角が上がった。
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