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第4話 日高 直継 ①

俺には好きな人がいる。 しかも思い続けて7年、片想い。 初めて会ったのは12歳の時。 学校が春休みで旅行した帰りに、離れて暮らすじいちゃんとばあちゃんのところへ遊びに行き、じいちゃんの洋食店に行った時、その人と出会った。 出会ったと言っても、《《彼》》は俺と出会ったとは思ってないと思う。 だって俺はその時12歳だったし、彼はスーツを着た大人。 大人は大人でも、右目の下に泣きぼくろがある綺麗な人。 容姿はもちろん、周りの空気まで澄んでいるのか?と思うぐらい綺麗だ。 彼、日替わりランチのグラタンセット食べてたんだけど、一口一口噛み締めながら食べてたんだ。 スプーンを口に運ぶ姿を見ただけで、俺の全身は震えたんだ。 周りの音が聞こえなくなって、視界には彼しか見えてなって、心臓が壊れるそうになるくらいドクドク脈打って、顔から火が出そうになるくらい熱くなるのがわかった。 あんな気持ちは後にも先にも、あの時だけ。 彼が食事を終えても目が離せず、じっと見つめていると、急に彼の横顔が悲しそうになり、彼の周りまで悲しみでいっぱいになっていくのがわかった。 『よかったら、これ…』 俺は気がついたら彼にハンカチを差し出していた。 驚き、俺を見上げる彼と視線がぶつかると、それまでに経験したことがない感情が洪水のように押し寄せてきて、 『まだ使ってないので綺麗です』 それだけ言うのが精一杯。 本当はもっと話したかったけど、もっと近くで見つめてたかったけど、無理だった。 心臓が爆発するんじゃないかって思って… 急いでじいちゃんのいるキッチンに入っていったけど、ドキドキは止まらなかった。 今ならわかる、あの時の気持ち。 あの気持ちは、そう…… 『恋に落ちたんだ…』

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