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第6話

気付かぬ内に瞑っていた瞼をそっと開ける。 薄明かりの中、光る目がこちらを見つめているのに驚き、体がビクッと飛び上がった。 「はははっ!」 面白そうに笑う男をキッと睨むと、サイの指輪をそっと擦った。 「お前が…お前がサイを…」 私の言葉に笑うのをやめて、クルッと踵を返し奥にある椅子に向かって歩き始める。 入ってすぐには暗い部屋と感じていたが、目が慣れてくると壁の中にある空間とは思えぬ広さと、さっと見ただけでも豪華な作りとわかる家具類が並んでいる。 その中でも部屋の真ん中に置かれ、ボワッとした灯に照らし出された大きなベッドが目についた。先程まで何が行われていたかわかる布の乱れから目を逸らす。 「あぁ、アレはお前モノだとか言うやつだったな。お前の父ほどの抱き応えはなかったが、そこそこの抱き心地ではあった。」 ドスンと椅子に座りながら面白そうに話す。 「…っざけるな!」 腹の底から煮えたぎるようなグラグラとした怒りが湧き起こり、血が沸騰していく。顔が熱くなり、理性が吹き飛ばされた。 指輪に気を込めると、キンという音と共に、指輪から光が放たれ、それをグッと掴むと剣になって私の手に収まった。 それを両手で握り直し、男に立ち向かう。 「だああぁぁぁぁーーーーー!!!」 床を蹴り上げ、男に向かって剣を振り上げた…瞬間、体がぐいっと天に持ち上げられ、剣を持つ手に熱が走った。 「っつぅ!」 カランと手から剣が落ち、床に当たって音が響く。 「おろせ!おろせーーー!」 ゆったりと座ったままでそれを眺めていた男がすっと指を動かすと、自分も椅子から立ち上がり、まるで犬を散歩させるように自分の歩む速度に合わせて私を動かす。 目を背けたベッドに否応なくドスンと落とされ、四肢を見えない糸に絡め取られていく。 体を捩ると、ふわっとサイの香りが鼻をくすぐった。 「サイ…。」 「愛しい者の香りに抱かれる気分はどうだ?」 ギシッとベッドが軋み、男がベッドの端に腰掛けた。 「来るな!近付くな!」 「そのように大声を上げるか…ならば…」 すっと手が上がり、何をされるか分からない恐怖で、無意識に目を瞑った。 「ぎゃあぁぁぁ!!」 悲鳴が上がり、瞼を開くとそこには外にいるはずの者。 「な…にを?!」 「若王様ぁ!助け…っああああああ!!」 男がその口を合わせると、一瞬でその体は萎み、先程から外に積み上げられていった者達と同じ骸となった。 それをまるで紙屑のようにポイと扉の外に放り投げる。 「や…やめろ!約束違反だ!!」 「それは私の意に沿った食事となった場合の話。このように我に剣を向け、大声を出して威嚇するようでは、私にとっていい食事とは言い難い。それこそお前のいうところの約束違反ではないのか?」 「それはっ!」 「大方、初めから私を斬り殺すつもりであったのだろう?父は私の事を何も話さなかったのか?」 「…入るなと、関わるなと…」 「はははっ!己の力量を過信したか!あの程度で私を永遠に封じたと?!面白い…ならばお前には私の力を少し認識してもらおうか?」 「何をするつもりだ?」 「私はな…消せるのだよ、全てを!!」 男が腕を振るのが目の端に見えた瞬間、周りから全ての音も光もなくなった。

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