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第10話
「人とはなんとも忘れやすいモノなのだな。」
目を覚まし、女を中に入れ殺めたことは約束違反だと食ってかかった私にため息と共に呟いた。
「お前は食事だ。それがどのような状況にあるかで味も満足感も変わる。先程のように、全身で拒否されれば、食べる気も失せると言うもの…」
「それは…でも、約束は約束だ!」
心の片隅にあるちくりとした棘に気がつかないふりをした。
「お前たちが美味しいものを食べたいのと同じように、私も食事は美味しく摂りたい。」
そっと手が私の下半身をさする。
「んんっ…そもそも私は食事…っではない。」
「私にとっては食事だ。」
身を捩る私の腰を掴むとパクッと口に含む。
「やめ…っろ!」
「また拒否するか…ならば…」
「拒否する私の気持ちは無視か!」
「なんの話だ?食事の気持ち?」
訳がわからないと言う顔で私を見下ろす。
「お前にとっては食事だとしても、私は心のある人間だ。食事だ食事だと言われ、あのようにただ搾取されるだけでは私だって…」
いや、私は何を言っているんだ?
これではまるで…
「ほう?
お前は私に愛されたいのか?」
「違うっ!!」
「女と私との行為を見て、妬んだか?」
「違うっ!!」
そうじゃないと頭を振るが、苛々としたドス黒い渦が心の奥深くから湧き出してくる。
「愛して欲しいのか?」
「違うっ!!」
スーッと背中を指が這う。
ゾクゾクとした悪寒が走り、熱が一箇所に集まる。
ぬぬっと指が体内に入り、その硬く閉ざした部分と共に心も開かされていく。
「私の愛をお前に注ぎ込んでやる。だがお前にとっては私は仇…それでも受け入れるか?」
サイの顔が浮かぶ…もう、ボワーっとした輪郭しか思い浮かばない顔。
「私にもわからない…だが食事では嫌だ!」
横を向く私の顎に手を添えて自分の方に向けさせる。
「今はそれでいい…お前を愛そう。」
答えを聞く間もなく塞がれた唇に自ら口を開けた。
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