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第7話
帰り道、拓斗は何か言いたそうにしているが、どの言葉も飲み込んでいる。
そこで思い切って聞いてみた。ちょっとでも元気ずけたい。
「あのさ、拓斗は俺が好きなの?それとも久遠さんがすきなの?」
拓斗は黙ったまま立ち止まった。
「僕は、八尋が好きだよ。でも気持ち悪いだろ?久遠さんも言ってたし、そんなの言ったって嫌われるだけだって。だから今日聞いたことは、なかったことにして。僕は、今日、八尋が来てくれて嬉しかった。マンションに向かってる時から、僕としたいのかと思ったらすごく興奮してた。気持ちは伝えるつもりはなくて、ただセックスできればいいと思ってた。
マンションについて久遠さんにキスしたのもその気持ちを少し抑えようと思ったからなんだ。こんなゲスな奴なんだよ、僕は」
拓斗の声は震えていて、涙がぽたぽたとこぼれ地面にシミをつくった。
八尋は大きく息を吸って、吐き出した。
「あーあ、じゃあやり損かよ」
数歩歩いて振り返った。
「明日から勉強は教えてくれないのか?」
拓斗は顔を上げた。
涙でクシャクシャな顔を見て、八尋は笑った。
「その顔wセックスしてるときみてーw」
八尋はお腹を抱えて笑った。
「ちょ、そんな大きな声でいうなよ」
「じゃあ、教えてくれる?久遠さんにはすこし教わったけど、拓斗には教わってないしさ」
「八尋がいいって言うなら教えるけど」
「よし、じゃあ明日から教えろよ!」
八尋はニカッと笑って見せる。拓斗は涙を拭いて顔を上げたが、何かに気付いて考え出した。
「でも……」
「ん?」
八尋は何かと首をひねった。
「セックスはしてないよね?」
「え……」
八尋は思い返すと確かにお互い下には挿入はしていない。
口でするのはセックスと呼べるのだろうか?
「ここまでしたならさせてくれるよね?」
その言葉にドキッとする。
「ちょっと待って、それは俺が挿れるの?それとも挿れられるの?」
「僕は挿れられたいんだけど、八尋は挿れる方でいい?」
やっぱそうだよな、拓斗はドМだし受けだよな。
「ああ、そっちならいいかも」
とさらっと返事をしてしまい、あっと声を漏らす。
「じゃあ、明日。テストの問題用紙とかも持ってきて。どう間違えたのか見てちゃんと教えるから」
そして拓斗は歩み寄ってきた。
「セックスの方もちゃんと教えるから」
耳元でささやきそっと離れた。
「今日はありがとう。嫌わないでくれてうれしいよ。また明日」
拓斗はそういって走っていった。
「あれー?」
断るはずだったのが同意してしまった。久遠さんは拓斗をバカって言ってたけど、俺はそれ以上のバカだと確信した。
そして、あんな流れで同意に話を進める拓斗は頭がいいとしか思えなかった。
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