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第11話
「えっ」
「大丈夫、防犯用だから」
と久遠はリビングへと向かった。
「久遠は愛人とか適当な相手を連れ込んで、ああやって映像集めてるんだって。変態だよな」
拓斗は口元を指でぬぐいながら言った。まだ顔が赤く息が上がっている。
「それはお前もだろ」
「八尋だって、あおられてやってるじゃないか」
拓斗はふらつきながら立ち上がった。
「今日も飲んじゃった」
と拓斗はのどに手を当てにやりと笑ってリビングの方へ行った。
ぞくりとして再び勃ちそうだった。
「これが実践的な保健体育の授業なのか……」
昨日、勉強していた部屋に入ると拓斗はベッドで横になっていた。
「玄関って何かあるの?すごい体がおかしかったんだけど」
八尋がベッドの脇に座り聞くと、拓斗は顔だけ八尋に向けた。
「たぶん空間媚薬だね」
「空間媚薬?なんか消臭剤みたいな名前だね」
八尋が言うと拓斗は噴き出して笑った。
「媚薬だからむしろばらまいてるけどね」
「久遠さんはあのの空間にいて平気だったのかな?」
「平気じゃないからトイレにこもってるだろ?」
言われてみると、通ってきたリビングに久遠さんはいなかった。
平気そうに見えていたけど、そうでもなかったらしい。
「いきなりだったからちょっと疲れちゃった」
拓斗は目を閉じた。
八尋もあんなことになるとは思っていなかった。空間に漂わせる媚薬なんてそんなものがあるのも知らなかった。体が熱くなって止められなくなったのはそのせいだったんだと八尋は顔をベッドに伏せた。自分がおかしくなったわけではなかった事に安心した。
顔を上げ、拓斗の顔を眺めるとまつ毛が長い。
下唇がぷっくり膨れて綺麗な顔をしている。さっきまでこの唇が八尋のペニスをくわえていた。
そんなことを考えると胸が高鳴った。
また余計なことを考えてる。
気をそらそうとポケットからスマホを取り出す。
「そういえば、拓斗の連絡先教えてよ」
「いいよ、ライムはやってる?」
ライムはメッセージや写真などを個人間やグループでやり取りできるsnsだ。
「やってるよ」
「IDは」
と拓斗は番号を言った。
「え、ID番号覚えてるの?」
「うん、わざわざスマホ見るの面倒だし」
と拓斗は言ってどやっと笑顔を見せた。
「すごいけど、なんか意味ない気がする」
「電話番号みたいなものだよ。それは覚えてるだろ?」
「まあ、なんとなくは。IDもう一回いって」
と八尋が言うと、拓斗はもう一度数字を言った。
「登録できた」
とスタンプを送ると、拓斗のスマホから音が鳴った。
拓斗はポケットからスマホを取り出すと、ライムの画面を開いた。
「イタチだ。可愛い」
イタチのイラストとよろしくの文字が書かれているスタンプを八尋は送っていた。
拓斗も操作をしてスタンプを送る。
八尋のスマホが鳴って画面を見ると犬がしっぽを振ってるスタンプだった。
「犬好きなの?」
「好き」
八尋はふーんと拓斗の隣に寝転んだ。
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